第11章 尸魂界潜入編
藍染は集まった隊長達を一頻り見渡した後、口角を吊り上げ笑った。圧倒的に不利な状況下で笑顔を浮かべる姿は些か不気味にも思える。
「…どうした。何がおかしい、藍染。」
「…ああ、済まない。時間だ。」
「……夜一さん!上!!」
「!!離れろ砕蜂!!」
空を見上げたゆうりは異変に気付き叫んだ。つられて顔を上げた四楓院が砕蜂へ指示を出しつつ己も瞬時に藍染から距離を取る。
その刹那、ドンッ、と音を立てて四角柱状の橙色っぽい光が藍染を覆う。僅かばかりその光に触れた砕蜂の死覇装の裾と、四楓院の腕に巻かれた布が焦げ付く様に破れた。
「……ば…莫迦な……………!!」
「あれは…!」
「大虚!!!」
ギシ、と音を立てて瀞霊廷の空がひび割れる。そこから一本の手が出てきたかと思えば、ひびはあっという間に拡張され無数の大虚が顔を出す。
「ギリアンだ…!何体いやがんだ…!」
「いや…まだ奥に何かいるぞ…!」
人の目の形のように開かれたそこには複数の大虚が並び、更にその奥には、ギリアンより大きな何かが居る。それが何かは分からない。皆が呆気に取られていると、空から更に2つの光が双殛の丘へ向かって勢いよく降りて来た。それは正確に東仙と市丸の元に降り注ぐ。彼らを拘束していた松本と檜佐木は、四楓院達に倣い咄嗟に光を避けた。
「…ちょっと残念やなあ…。もうちょっと捕まっとってもよかったのに…。さいなら、乱菊。ご免な。」
振り向いた彼の表情は何処か寂しげに見えた。まるで二度と会う事も叶わなくなるような…そんな感覚に松本の胸がキュッと締め付けられる。
そんなやり取りの中、光に包まれる三人の足元の地面ごと身体が浮いた。
「!…浮いた…っ!?」
「逃げる気かいこの…」
「止めい。」
「総隊長…!」
斬り掛かろうと斬魄刀を抜いた射場を山本の至極冷静な声が止めた。ゆうりは緊張の糸が切れ、細く息を吐き出し始解を解く。こうなってしまっては手の出しようがない。
「あの光は"反膜"と言うての。大虚が同族を助ける為に使うものじゃ。あの光に包まれたが最後。光の内と外は干渉不可能な完全に隔絶された世界となる。大虚と戦うたことの有る者なら皆知っとる。あの光が降った瞬間から藍染には最早触れる事すら出来んとな。」