第11章 尸魂界潜入編
今度は空から、"おぉおおおおおおおおおう!!"と叫び声が聞こえて来た。何事かと顔を上げて四楓院は目を見開く。次に落ちてきたのは、兕丹坊だった。市丸に切り落とされた筈の腕はゆうりと井上の治療によって完璧に治っている。寧ろ左肩には一人の女が乗っていた。
「空鶴!」
「空鶴さん!」
「おう夜一!ゆうり!あんまりヒマだったからよ、散歩がてら様子見に来たぜ!さァいくぜ兕丹坊!」
「おス!」
「散在する獣の骨!尖塔・紅晶・鋼鉄の車輪 動けば風 止まれば空 槍打つ音色が虚城に満ちる!破道の六十三!"雷吼炮"!!!」
詠唱に合わせて空鶴の腕が雷を纏い、バチバチと光る。掌を比鉅入道へ向け、破道を発射させると大きな閃光が見事に当たり爆発した。仲間の一人が倒れたにも関わらず、眉一つ動かす様子がない斷蔵丸と嵬蜿に兕丹坊は息を飲んだ。本来仲がいい筈なのに。仲間がやられれば心配するはずなのに。その姿が見られないのは、きっと藍染に何かされたに違いない。そう思った。
けれど野放しにする事は出来ない。仲間だからこそ、止めなければならない。兕丹坊は左手に力強い拳を作りその手で嵬蜿の頭を殴り付ける。
大男同士の戦いはとても荒々しかった。倒れる度、周囲の壁が壊され欠片が至る所に飛び散る。市丸は笑いながら己へ飛んでくる石を左手で払う。
「ひゃあ派手やなァ…。どないしよ?」
「動かないで。」
パシッ、とその手が誰かに掴まれる。ヒヤリとした刃が首に触れた。後ろから聞こえて来た声に、随分と聞き覚えがあった。二人は何も語らない。視線すら合わない。市丸はただいつもと変わらない表情で藍染へ視線を送る。
「…すんません藍染隊長。つかまってもた。」
「…これまでじゃの。」
「…なんだって?」
「…判らぬか藍染。最早おぬしらに…逃げ場は無いということが。」
気が付くと周りには"天挺空羅"を受けた隊長、副隊長達が立っていた。市丸を松本が、東仙を檜佐木が後から拘束し刀を首に充てている。藍染と戦っていたゆうりはいつの間にこれ程迄に死神たちが集まっていたのかと俄に驚いた。それ程までに、彼との戦いに注力していたのだ。
「…藍染…。」
「…藍染隊長…!」
「…終わりじゃ。藍染。」