第11章 尸魂界潜入編
藍染はヒラリと一歩退き太刀を避けると同時に一気に距離を詰め今度こそゆうりの心臓を目掛け刀を押し出した。
ズブリ、と長い刀身が根元まで突き刺さり身体を貫く。背中側から飛び出る刃は彼女の血を纏い真っ赤に染まった。滴る血液が藍染の右手を濡らす。白哉は目を見開き、市丸の指先がピクリと揺れる。
「崩玉を狙っている事は直ぐに分かった。随分呆気ない幕引きだったな。」
「ゆうりッ…!!」
ルキアが叫んだ瞬間、刀から感じる彼女の霊圧が消えた。表情が揺らぐ事が殆ど無かった藍染の目が俄に見開く。そこに残っていたのは、ゆうりの着ていた黒い羽織だけだったのだ。辺りでは白い胡蝶蘭の花弁が舞っている。
「何……」
「隠密歩法"四楓"の参"空蝉"。」
完全に藍染の後ろを取った彼女は同時に大太刀の刀身を普通の刀と同じ程に縮め、思い切り鋒を突き出した。体躯を貫く寸前、藍染は躱そうとしたが間に合わず刃先が二の腕を掠った。致命傷にもならなかった事につい舌打ちが溢れる。彼は一度その場から飛び退き刀を鞘へ収めた。俯く彼の口元が何故かやけに嬉しそうに見えてゆうりは訝しげに眉を顰める。
「…どうして」
「………。」
どうして、貴方は笑っているの。
それを尋ねるより先にゆうりの両サイドを何かが通る。四楓院と砕蜂だった。四楓院が、藍染の斬魄刀の鵐目を掌で抑え、砕蜂が首筋へ刀を充てる。
「…これはまた、随分と懐かしい顔だな。」
「動くな。筋一本でも動かせば」
「即座に首を刎ねる。」
「………成程。」
「!」
彼は無表情に戻った顔を上げると、背後で何か大きな大砲玉でも落ちたかの様な轟音が響く。それは一度だけではなく二度、三度と続いた。
「………!こいつらは…!!」
「門番…。」
音の正体は白道門と同様に門を任された門番達だった。兕丹坊と同じく巨体の3人はまるで一つの大きな壁のようだ。総隊長が門番である彼らを態々この場に呼び付けるとは思えない。だとすると、彼らは藍染に助力する為に現れたと伺える。
「莫迦な……!!此奴らまで手懐けておったというのか…!」
「…どうする?幾ら君達でも僕を捕らえたまま彼等とは戦えまい。それとも、ゆうりに戦わせるか?」
「ちっ……。…!」