第11章 尸魂界潜入編
ゆうりが双殛の丘へ急ぐ中、その地は既に地獄の様な光景だった。ルキアを連れて逃げていた筈の阿散井は市丸達と同様の方法で東仙により強制的に双殛へと転移させられ、後から到着した一護と共同戦線を張るが敗北。阿散井は深い傷負い、一護は腰を半分斬られ最早背骨と半身だけでギリギリ繋がっている状態だった。狛村もその場へと駆け付けたが、藍染の使用した黒棺であえなく倒されてしまう。各隊長、副隊長は"天挺空羅"を受けて急ぎ双殛へと向かっていたが、どうにも間に合いそうには無い。
清浄塔居林に潜伏していた際発見した資料を用いて、藍染は浦原が開発した"魂魄の中に埋まった異物を取り除く道具"を完璧に作り上げた。それを使い右手をルキアの胸へ突き入れる。彼女自身に何か傷が出来るわけでもなければ血も出ず、まるで肌が藍染の手を避ける様にして綺麗に円状の穴が出来る。そこに埋まっていた崩玉を掴み取り出すとルキアに空いた穴は問題なく閉じた。
「これが"崩玉"……ほう、魂魄自体は無傷か。…素晴らしい技術力だ。…だが残念だな。君はもう用済みだ。殺せ、ギン。」
「…しゃあないなァ。」
取り出した崩玉を懐へ仕舞い、ルキアの首につけられた首輪を掴むと身体の小さい彼女は軽々と持ち上げられた。躊躇いなく、あくまでも冷淡な声音で市丸へ告げると彼もまた、迷わず己の斬魄刀に手を添える。
その瞬間、物凄い速さで此方へ向かって来る強い霊圧を感じた。大気を揺らす、重力そのものの様な圧力。間違いなくゆうりのものだと分かった。だが今更手を止めるわけが無い。市丸は斬魄刀を抜き、その鋒をルキアへ向ける。
「射殺せ。"神鎗"。」
彼の斬魄刀が急速に伸び彼女へ向かっていく。藍染の霊圧にあてられ身体の弛緩したルキアに最早避ける術など持ち合わせて居なかった。
殺される…ー。
ぼんやりとする頭でそう思った刹那、一瞬で彼女の姿が消える。しかし市丸の持つ刀からは確実に何かを穿いた感覚があった。
「…に…兄……様………!」
すんでのところでルキアを護ったのは彼女の義理の兄である朽木白哉だった。腹を刺された白哉は表情一つ変えずルキアを見下ろす。
市丸の刀が伸びた時と同じ勢いで戻っていく中、彼女は己の義兄の取った行動が理解出来なかった。ただただ困惑し、片膝をついた彼の体躯を支える。