第11章 尸魂界潜入編
「一度でも…目に………、!!」
言葉を反芻させた卯ノ花は一つの結論に辿り着く。隊長達は同じように藍染の解放を等しく見ている。…だが、絶対に見る事の出来ない男も居たはずだ。しかし彼は、藍染の死に異議を唱える事もせず受け入れていた。それを指し示す事はただ一つ。
「…気づいたようだね。そう、一度でも目にすれば術に堕ちるという事は眼の見えぬ者は術に堕ちる事は無いということ。…つまり最初から、東仙要は僕の部下だ。」
「「「!!」」」
その言葉を合図に、市丸は左腕の袖から包帯にも見える布を出した。それは藍染と市丸を中心に渦を巻く。とても近付くことすら出来ない。
「…最後に誉めておこうか。検査の為に最も長く手が触れたからとはいえ完全催眠下にありながら僕の死体にわずかでも違和感を感じた事は見事だった。卯ノ花隊長。さようなら。君達とはもう会うこともあるまい。」
「待て…」
「私の斬魄刀!!」
勇音が己の斬魄刀に手を掛け、ゆうりが手を伸ばした刹那、バンッ、と激しい光と音を響かせ彼らはその場から姿を消した。
何も残らないそこに呆気にとられる。斬魄刀を奪い返し損ねた。死神として斬魄刀は命の次に大切なものといっても過言では無い。それを敵に奪われたのだ。焦らずにはいられない。冷や汗を流し固まる彼女の元へ、卯ノ花が一歩歩み寄った。
「…ゆうり、貴方は知っていたのですか。藍染達の裏切りを。」
「……知っていました、もう何十年も前から。それでも止められませんでした。すみません…。」
「……そうですか。勇音、転移先を捕捉して下さい。」
「はい!」
「ゆうり。貴女は藍染を追いなさい。」
「あ……疑わない、んですか…?」
「斬魄刀を奪われている時点で貴女が藍染と敵対している事は明白。何を疑う必要が有りますか?寧ろ謝らなければならないのは、藍染の企てを見抜く事の出来なかった私達死神の方でしょう。」
「そんな事…。」
勇音は懐に入れているインクを指に取り床に文字を紡いでいく。卯ノ花は腰に差している斬魄刀を抜いた。藍染と共にいた事で疑いの目を向けられるかと思っていたが、どうやらそんな事は無いらしくホッと息をついた。