第11章 尸魂界潜入編
パラパラと落ちてくる瓦礫に氷塊が混ざっている。片腕で目元を庇い、崩落が落ち着いた頃そっと瞼を持ち上げた。
「ーーー卍解。大紅蓮氷輪丸。」
「冬獅郎…!」
塔の中心に立っていたのは日番谷だ。美しい氷の翼を身にまとい、背後には2組の華が浮いている。初めて見る彼の卍解は、氷雪系最強と謳われるのに相応しい風貌に見えた。
対峙しているのは藍染と市丸で、市丸の腰には己の斬魄刀である胡蝶蘭が有る。
「ーー藍染。俺はてめえを…殺す。」
「…あまり強い言葉を遣うなよ。弱く見えるぞ。」
それは余りにも一瞬の出来事だった。攻撃を仕掛けようとする日番谷の霊圧が上昇する。が、それよりも素早く間合いを詰めた藍染の斬魄刀が、彼の右肩から下腹部までを斜めに斬り裂いた。
視界に留める事すら叶わない藍染の動きに日番谷は為す術なくただ目を見開く。
「…嘘……だろ…。」
「とうしろ…冬獅郎!!桃!」
深い傷を負った彼は立っている事すら出来ず重力に従いドサリと前のめりに倒れる。止まっていた時間が動き出すみたくハッと顔を上げたゆうりは床を蹴り、藍染と市丸の横を通って倒れる彼らの元へ膝をついた。2人ともまだ息は有る。だが日番谷は傷が余りに深く、雛森に至っては心臓に近い部分を斬魄刀で一突きにされている。霊圧が高い彼らといえどこのまま放置していたら確実に死ぬ。
眼前に迫る友人の死にガチガチと震え歯が鳴る。今にも瞳から涙が零れ落ちそうだった。心臓が握り潰されそうな程痛い。
グッと下唇を噛み締め両手に拳をつくる。藍染は何事も無かったような顔で凍る塔を見上げた。
「…良い眺めだな。季節じゃあ無いが、この時期に見る氷も悪くない。さて、行こうかギンーーー。」
「…やはりここでしたか。藍染隊長。…いえ、最早"隊長"と呼ぶべきでは無いのでしょうね。大逆の罪人、藍染惣右介。」
現れたのは卯ノ花だった。隣には勇音も居る。どうやら異変に気付いたのは日番谷だけでは無かったらしい。藍染の瞳が少しだけ、興味深いものを見る目に変わった。
「どうも。卯ノ花隊長。来られるとすればそろそろだろうと思っていましたよ。すぐに此処だと分かりましたか?」