第11章 尸魂界潜入編
どれ程の時間が過ぎたのか分からない。藍染の白伏を受け気を失っていたゆうりは何かに突き動かされるようにしてハッと目を開いた。同時にズキズキと痛む腹に顔を顰める。
周囲を見渡すと見覚えの無い部屋だった。寝台に乗せられており、身体は鎖条鎖縛でしっかりと封じられてて頭しか動かす事が出来ない。呼吸を落ち着け、霊圧探査を研ぎ澄ます。…一護と白哉…それから夜一さんと砕蜂隊長、何故か更木隊長と狛村隊長がぶつかり合っているし、総隊長は浮竹隊長、京楽隊長と戦ってる…?もう訳が分からない。外で何があったの…?
状況の理解が全く追い付かず、困惑の色を強めるゆうりの元へ藍染が姿を現した。
「漸く目を覚ましたか。気分はどうだい?」
「…外で、何が起こっているの。」
「双殛は破壊され、朽木ルキアが処刑を免れ…旅禍に奪還された。それだけだよ。」
「それなら、崩玉を取り除く事も出来なくなったわけですね。こんなところに居て良いんですか?」
「私が他に何の準備も無いと思っているのか?」
藍染は静かに彼女の元へ近付き寝台の端に腰を掛ければ、ギシリとスプリングが悲鳴を上げる。動く事の出来ないゆうりの顎を掴み強制的に視軸を絡めた。
「どうやって鏡花水月を解いた?」
「素直に喋るとお思いで?」
「喋らないというのならば私は君の友人に手を掛けなければならなくなる。」
「私の友達はみんな強い。簡単にやられたりはしないわ。」
「死神は兎も角、現世に住まう者はどうだろうね。」
「…!!外道…。」
この男の示す友人とは一護達の事では無い。多分、霊力を持たぬ浅野や有沢達の事だろう。彼らの純粋に笑う顔が頭に浮かび、苦々しく表情を歪めた。ただの人間をこんな事に巻き込むわけにはいかない。絶対に。沈黙の続く最中、部屋の外からひょっこりと誰かが覗き込み声を掛けてきた。
「藍染隊長、十番隊隊長さん達が来はりましたよ。」
「そうか。雛森くんは?」
「一緒……というか、着いて来はってますね。」
「ならば手筈通り頼むよ。」
「ほな行くよ、イヅル。」
「…はい。市丸隊長。」
「え!?」
顔は見えずとも部屋の奥から聞こえた声は、確かに吉良のものだった。あまりに予想していなかった人物の登場にゆうりは狼狽える。