第11章 尸魂界潜入編
「ここまでだ。残念だが今これ以上本気で暴れられても困るからね。少し眠って貰おう。」
「辞め……!」
パンッ、と乾いた音が響き真っ白な光が彼女を包んだ。途端、意識が一瞬にして遠のいたゆうりから、完全に力が抜け藍染の身体へもたれ掛かる。
「白伏ですか。」
「あぁ。腹の傷はそのままにしても死にはしないだろう。瀞霊廷の様子はどうだ?ギン。」
「問題なく。」
「そうか。…思った以上に旅禍達は健闘している様だね。処刑の時間を早める事も視野に入れよう。」
市丸は斬魄刀についた血を払い鞘に戻す。藍染の腕の中で意識を失ったゆうりの元へ近付き、真っ白になった頬を撫でた。まだ少し暖かい。
「……で、ゆうりはどないする気なんです?」
「このまま虚圏に連れて行くのも面白そうだな。知っているかい?彼女は私の鏡花水月を克服している。」
「そんな事出来はりますのん?」
「本来であれば不可能の筈だよ。だが彼女はやってみせた。…興味が湧かないか?おそらく回帰能力の一種だろうが…そうだとしたら、とても利用価値が高い。」
「あーあ…また悪い顔して。いつかの時を思い出しますわ。連れて行くのはボクは歓迎ですけど、暴れられない様にちゃぁんと縛っとかんと。」
「問題無い。私が直々に縛道を掛けておく。ギンは戻るといい。」
「……ほな、お言葉に甘えて。」
数秒の間を空けて市丸は踵を返す。2人でこの場に残すのはどうにも許し難いが、計画の遂行の為駄々を捏ねている時間は無い。背を向けると同時に表情を消した彼は、胸の内で密かに燻る嫉妬心を押し殺すように手に拳を作りその場を後にするのだった。
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