第11章 尸魂界潜入編
死んだ四十六の住民に触れ歩きながら静かに瞼を降ろし数ヶ月前まで思考を巡らせた。ルキアを捕えに来たのは十三番隊では無く朽木白哉と阿散井恋次…恋次との関係は分からないが、白哉はルキアの義理の兄であり、規則の為だとあらば容赦なく彼女を捕らえるだろう。そして、ルキア自身彼には逆らわない。白哉を派遣させたのは確実に彼女を捕らえる為……だったとしたら、中央四十六室はその時点で落ちていた可能性が高い。
「…やってくれるわ。」
グッと拳を握りゆうりは更にその奥に有る四十六室の住民が住まう完全禁踏区域、清浄塔居林へ足を踏み入れた。本来ならば居住区という事もあり人の気配がしそうなものだが全滅している今、この場から生き物の気配は感じられない。
辺りを見渡しながら慎重に進む。すると不意に一部屋から人影が現れた。反射的に構え、斬魄刀を抜き警戒を露にする。
「久しぶりだね。元気そうで何よりだ。染谷くん。」
「…貴方も元気そうですね。隊長を辞めて清浄塔居林に隠居ですか?」
「それも魅力的だが、残念ながら死神はいくら昇格しても中央四十六室の住民にはなれないよ。」
涼し気な顔で姿を見せたのは、先程殺されたとされていた藍染惣右介だった。この男のせいで瀞霊廷は今混沌の渦に巻き込まれている…そう思うと悔しさもあり憎さも有る。今こうして対峙している間にも多くの死神や人間が涙を、血をながしているのだ。
「最初から全部、貴方の仕業だったのね。ルキアの捕縛から、処刑判決まで全て。」
「その通りだ。だが、君は思っていたより早い到着だったな。それに……中央四十六室はまだ"生きている"筈だ。そうは見えていないという事は…鏡花水月が解けているね。どんな手を使った?浦原喜助の仕業か?」
「さて、どうだったかしら。」
ゆうりはとぼけて肩を竦める。藍染は瞳を細めると腰にさしていた斬魄刀をスラリと抜いた。このまま始解を見せられてしまえば振り出しに戻る。焦った彼女は床を蹴り一瞬で距離を縮めた。
ガガッ、と音を立てて斬魄刀同士が刃を合わせる。彼は右手1本で持った刀でいとも容易く太刀を受け止めた。
「何をそんなに焦っている?そんなに始解を見せられるのが怖いのかい?」
「藍染さんこそ、焦った方がいいんじゃないですか?此処で私が爆発の1つでも起こせば必ず誰か来ますよ。」