第11章 尸魂界潜入編
市丸の目を見ても滅多な事で表情を崩さない彼から何かを読み取ることが出来なかった。
「大人しくしや。これ以上瀞霊廷内勝手にフラフラせんといて。」
「瀞霊廷は元々私の家よ。ギンはここで何か見られたくないものでも隠してるのかしら?」
「……。」
挑戦的な様子で静かに笑うゆうりに彼は無言のままである。
やはり中央四十六室に何か有る。或いはーー…誰かが居る。そう確信した彼女は瞬歩を使いその場から姿を消した。
「……追ってくるかと思ってたけど、来ないわね。」
四十六室へ急ぐ中、振り返ったが市丸が追ってくる姿は見えない。他の隊長、副隊長も然りだった。外套を被り直し、走る最中ふと各所から強い霊圧同士のぶつかり合いを感じる。雨竜と…これは、涅隊長だ。京楽さんとチャドも戦いを始めている。何より1番ヤバいのは……更木隊長と一護が戦っている。
瀞霊廷一、戦い好きで尚且つ化け物じみて強い。正直ゆうりが誰よりも戦いたくないと思っていた相手だ。
一護の様子を見に行った方が良いだろうか…いや、でも近くに夜一さんの霊圧も感じる。猫の姿故かとても微弱だが。何かあれば、彼女も助力してくれる筈。それならやっぱり私は、目的地へ少しでも早く向かおう。
「皆…生き延びて…!」
密やかな願いの元、ゆうりは中央四十六室へ急いだ。
非常時であっても司法機関であるここは基本的に動く事は無い。閑散とした赤い格子状の門前に立ち見上げる。まだ中央四十六室が機能しているならおそらく開いてはくれないだろう。だが既に藍染の手に落ちているのであれば…。
「…!開いてる…。」
扉を押してみると施錠も、鬼道による結界すら無くいとも簡単に開いてしまった。ここから先は己にとって未知の領域だ。あまりに静かすぎるこの場所で、ゴクリと生唾を飲み下し奥へと進む。
「これ…は…!」
そこで見た光景に開いた口が塞がらなかった。階段上に半円形で設置された椅子には確かに四十六の者であろう人達が座っている。だが、誰一人として息がある者が居ないのだ。一人は首を裂かれ、また一人は腹を穿かれ、夥しい血の海が広がっている。不自然な点が有るとすれば既に血は指につかない程固まっている事だ。
「これだけ乾いているって事は……殺されたのはここ最近の話では無さそうね…。」