第11章 尸魂界潜入編
翌日。4人の中で誰よりも早く目を覚ましたゆうりは小さな欠伸を零しながら辺りを見渡す。一護は仰向けのまま、岩鷲は壁にもたれ山田はどういう経緯があったのか岩鷲の膝に頭を乗せ眠っていた。他の死神に会う事は滅多にないであろう場所にすっかり気が抜けているらしい。
「良く寝てるな…。さて…私はさっさと行こう。」
目的地は、中央四十六室に絞った。ここに行けば何かわかる気がする。地下水路から地上に続く梯子を上がり外に出ると昨日と変わらず空は青々と晴れており、陽の光を浴びる心地良さに身体をグッと伸ばしたその時だった。
「いやあああああああああ!!!」
「………何…?」
聞こえて来た悲鳴。桃の声だ。東大聖壁の方…!
ゆうりは急ぎ塀を伝い声のした方へと向かう。次第にソコへ副隊長達の霊圧が集まっていくのを感じる。
到着し、少し離れた場所から見た光景に眉を顰めた。死神が1人、大聖壁に鎖結と魄睡を刀で貫かれた状態で磔られている。壁からは夥しい血が滴っていた。
「あ…あぁ…藍染隊長…!!」
「…藍染…?」
雛森にはあの隊士が藍染に見えるらしい。だが、ゆうりにとって彼は藍染どころか一般隊士にしか見えない。
それが示す事は1つだった。鏡花水月の催眠がちゃんと解けている。
「何や、朝っぱらから騒々しいことやなァ。」
「ギン…。」
騒ぎを聞き付けてか、市丸が現れる。彼の顔を見た雛森は少し前、日番谷としたやり取りが頭の中を反芻した。
"三番隊には気を付けろ。特に…藍染が一人で出歩く時にはな。"
その言葉が彼女の自制心を尽く砕いてしまった。犯人は市丸…そう辿り着いた雛森の霊圧が爆発的に上昇していく。
「お前か!!!!」
「!!」
「吉良くん!!どうして…」
激情に駆られた彼女は斬魄刀を抜き市丸に刃を向けた。しかし、すんでのところでソレは吉良の斬魄刀が受け止める。副隊長として当然の行動だった。
「僕は三番隊副隊長だ!どんな理由があろうと隊長に剣を向けることは僕が赦さない!」
「お願い…どいてよ吉良くん…」
「それはできない!」
「どいてよ…どいて…」
「ダメだ!」
「どけって言うのがわからないの!!!」
「だめだというのが分からないのか!」
「弾け!!"飛梅"!!」
「なッ…」