第11章 尸魂界潜入編
「花太郎くん、今は私の事なんてどうでもいいの。岩鷲くんと一緒に一護を連れて隠れて。治してあげてくれる?」
「でも…」
「お願い、今こっちにイヅルが向かってきてる。早く行って。」
「おめぇは来ねぇのかよ!?」
「私は恋次を治す。このまま放っておいたら死んでしまうわ。」
「……ったく、どっちの味方なのか分かりゃしねーな!一旦引くぞ!人の来ないところに案内してくれ!!」
「はっ、はい!!」
岩鷲は一護を俵のように抱え、山田は落ちていた斬月を必死に抱えその場から去って行った。元々一護達と共に行動していたのだ。きっと彼は治してくれる。けれど、阿散井は四番隊が来るまで誰も治療をしてはくれない。それなら自分が残り、少しでも治してやらないと…そう思った。
斑目の時よりも出血が酷い。意識も無く、呼吸も荒い。直ぐに取り掛からねば。手の平へ霊力を集め、淡い光が彼を包み込んだ。回帰能力を使い傷付いた臓器を、筋繊維を、神経を、失った血液を、元の状態へと戻していく。みるみる傷が修復していく中、もう殆ど視認出来る所まで吉良が来てしまった。彼は阿散井の傍にしゃがむ真っ黒な外套に身を包む女を怪訝そうに目を凝らした。
ゆうりは遠くから走って来る吉良と目が合うと、阿散井へ視線を落とし悩んだ。このまま付き添い、治療を続けるか…或いは引くか。
「……いや、残るべきでは無いわね。」
吉良は真面目だ。残って治療を続ければ、必ず隊長を呼ばれてしまう。それでは本来の目的を遂行する事は難しくなるだろう。阿散井の傷は概ね塞がった。後は四番隊が何とかしてくれる…それに彼は霊圧が高い。生命力はそれに比例するのだから、きっと死なない筈。
そう信じてゆうりは霊力をあてる事を辞めてフードを被りその場から立ち去った。数秒空けて阿散井の元へ到着した吉良とその部下達は彼の周辺に飛び散る血の量と、明らかな敗北の色を残し倒れる姿に絶句する。
「…あれは…!」
「ーーー…!!」
「オイオイオイオイ!ありゃあ…」
「あ…阿散井さん!!」
「大丈夫スか阿散井副隊長!!!」
「そんな…阿散井くんがやられる程とは…」