第11章 尸魂界潜入編
そう言って、するりと手は離れていく。
一体どういう意味だ…?ゆうりは何と、戦ってるんだ…?
それを言わぬまま、彼女は蔵を飛び出し行ってしまった。結局、止める事すら出来なかった。彼女の眼はあまりにも真っ直ぐで、俺たちとは全然違う何かを見据えている様に見えたから。残された檜佐木はその場に座り込み長く深い溜息を吐き出す。ゆうりは何を考えて、この地に戻ってきたのか。それを知るのはまだ先の話である。
一方、蔵から出たゆうりが向かったのは斑目の元だった。既に一護の霊圧はそこに無い。ましてや、この瀞霊廷内で一護と岩鷲の霊圧だけ感じる事すら出来なかった。
「一体何処に居るの…?」
死んだ、というより当然2つの霊圧がパッと消えてしまったのだ。霊圧を感知する事すら出来ない場所に居る…?答えは分からない。だが、刀を交えた一角であれば彼が何処に向かい歩みを進めているのか分かるかもしれない。空が茜色に染まり始める中、ゆうりは一角の元へと急いだ。
瀞霊廷は広く、移動1つで随分と時間が掛かった。弱々しい霊圧をした彼の元へ辿り着くと、一角は仰向けの状態で倒れている。目が開いている辺り意識は有るのだろう。救護班は呼ばれているのだろうか…?現時点ではまだ誰か人が来る気配は無い。屋根の上から飛び降り、彼の傍に着地するなりフードを降ろす。鬼道を外套に練り込むのも辞めてしまえば突如ぼんやりと浮かび上がる人影に一角は目を凝らした。
「あ?何だ…?」
「お久しぶりです、一角さん!」
「うぉ!?ゆうり!?」
「ボロボロですね。強かったでしょう、一護。」
「あぁ……いや、つーか何でお前が此処に居んだ!?死んだんじゃねーのか……っいででで!!」
「あんまり騒ぐと傷口開きますよ。」
何も無かった場所からいきなり人が現れただけでも驚いたというのに、それが一般的に死んだとされている女の姿に思わず身体を起こそうとして肩から下腹部近くまでついた傷に痛みが走る。ゆうりはしゃがみ込み両手に霊力を込め傷口へとあてた。
「…一護と顔見知りっつー事はお前も旅禍か。アイツにせよお前にせよ、何で敵の傷治してんだ…。敵に塩を送る様なもんだろーが。」