第11章 尸魂界潜入編
「び、びっくりした…。ごめんなさ…あ……」
「いって…いきなりなん……」
床に手をつき身体を持ち上げる。下敷きにされた男は、ゆうりの姿を認識出来なかった為突然何が起こったのか訳が分からず、ぶつけた後頭部を擦りながら目を開けた。
互いの視線がバッチリと絡み合う。衝突した事により、存在が認識されてしまった今外套は彼相手に意味を成さない。
「お前ッ……むぐッ!?」
「しーーっ!静かにして、修兵!!」
二度と出会う事が叶わないと思っていた人物が、何も無いような場所からポっと現れた事が信じられず檜佐木は直ぐに声を上げた。しかし咄嗟にゆうりは片手を彼の口へ乗せ言葉を遮る。
こんな場所で騒がれてしまっては、他の死神を呼び寄せてしまう。これ以上誰かに見つかる事は避けたい。
「…騒がないって、約束してくれる…?」
「……!」
口を塞いだまま、グッと顔が寄せられ彼は何度も首を縦に振った。檜佐木の言葉を信じ、ゆっくり手を離し立ち上がる。彼は未だ信じられないものを見るような目で彼女を見詰め、立ち上がった。ゆうりは檜佐木の手を取り直ぐ近くの蔵へ入りかんぬきで閉める。
「ふぅ…まさか貴方にぶつかるなんて。」
「本当にゆうりか…?」
「うん、久しぶり。」
終始呆気に取られていた檜佐木はグッと唇を噛み締めゆうりの手首を掴み引き寄せ、隻手で抱き締めた。
反動でフードが落ち、彼の表情を盗み見れば眉間に皺を作り今にも泣いてしまいそうな顔をしていて少しだけ心が痛む。
死んだと思っていた。総隊長からそう伝令があったから。二度と会えないと思っていた。そんな彼女が目の前に現れたのだから、感情を抑える事が出来ない。
「…会いたかった。」
「……心配してくれてありがとう。私も会いたかったわ。」
「馬鹿野郎…俺以外にもどれだけの人が悲しんだと思ってんだ…。」
「ルキアから聞いたよ!修兵が泣いてたって。」
「な…あ、当たり前だろ!それに泣いたのは俺だけじゃなくて…」
「ふふ、知ってる知ってる。いい仲間を持ったなぁって思ってるよ。今でも。」