第11章 尸魂界潜入編
へらへら笑い京楽は竹笠を親指と人差し指で摘み視線を後方へ向けた。目が合った様な錯覚にゆうりは口を小さく開く。そのまま彼は、怪訝そうな顔で見てくる伊勢の背中を軽くポンと叩いて出て行ってしまった。
「…全く、喰えない人だなぁ。」
彼は私がここに居ると薄々気付いて、教えてくれたのだろう。ルキアの居場所を。敵である筈の彼が何故…と思ったがあの人はとても敏い。京楽自身、ルキアの処刑に何かしらの違和感があるのかもしれない。だからこそ私に助力するのだと思う。
ゆうりは直ぐに双殛について調べ始めた。そしてそこに記された内容を見て驚愕する。
「双殛って…隊長格の処刑方法じゃない…!一般隊士の処刑に使われるのには大掛かり過ぎるでしょう…。」
他の隊長達に見守られながら行われるこの刑は、巨大な矛と磔架からなり、それぞれ斬魄刀百万本に値する破壊力と防御力を持つらしい。処刑時矛は、"燬鷇王"と呼ばれる真の姿・巨大な炎の鳥になり、これが磔架に磔にされた罪人を貫くことで刑は終わる。確かにこれならば魂魄は跡形もなく焼滅してしまうだろう。だが、藍染がわざわざこの処刑方法を選んだのだとしたら…崩玉はそれ以上の強度を誇るという事になる。実に厄介極まりないと思う。
「……矛をあらかじめ壊してしまえば処刑は確実に止められる…けど…。」
自分にとってのリスクも高い。崩玉を藍染の手に渡らせない為とはいえそんな事をしでかしたのがバレたら己もタダでは済まない筈だ。ルキアを連れ出すにしてもそれでは罪が増えるだけで、解決には至らない。
…やはり直接、藍染と対峙するしか。不穏な考えが巡る中、外で霊圧同士の衝突を感じた。
「これは…一護と一角さん?岩鷲くんは…弓親さんと戦ってるわね…雨竜と織姫も、戦闘を始めたのかな。」
チャドのみどうやら上手く大きな戦闘を避けながら移動をしているらしい。ゆうりは本を閉じ、書庫を後にする。再び屋根の上を移動し、一番派手に霊圧がぶつかり合う一護の元へ駆けてるそんな時だった。
「……わぁっ!?」
「うおっ!?」
突如屋根の上に人が飛び上がって来る。想定していなかった事態に、急に止まることが出来ずゆうりは思い切りその人物と激突し、勢いのまま通路へと転げ、ぶつかった相手に覆い被さるようにして落下した。