第11章 尸魂界潜入編
「そうだけどねぇ…あぁ、そうか。緊急警報で慌ただしかったから副隊長達は知らないんだっけ……旅禍の中にはね、ゆうりちゃんも居るそうだよ。」
「え……!?」
「!!」
書庫に現れたのは、京楽と伊勢だった。姿を隠す外套を着込んでいるお陰でまさに今ここに居ることはバレていないらしい。
それにしても、本当に勘のいい人だ。まさか私が此処に来る事を予測して書庫へ足を運ぶだなんて。
外套は姿を隠してくれるが、物音までは隠してくれない。ゆうりは緊張した面持ちで息を潜め彼らの動向を見守った。
「………彼女はこの場所が好きだったからねぇ、来ると思ってたんだけどどうやら読み違えたらしい。戻ろうか、七緒ちゃん。」
「待って下さい、ゆうりさんが旅禍って、本当ですか…?一体なんの為に…?」
「おそらく本当だよ。市丸隊長の言葉だからね。彼、ゆうりちゃんの事に関して間違えるなんて有り得ないでしょ。目的はボクの知る所では無いけど…考えられるとすれば、ルキアちゃん絡みじゃないかな。」
「そんな…。」
なるほど、ギンがバラしたのね。隊長としてその行動は多分正しい。そして、それ故に一番警戒されているのは私かもしれない。
ゆうりはフードの端を摘みキュッと下げた。バレても問題なく動く為にこの外套を着てきたが、警戒される分少々やりづらいのは確かだ。現にこうして京楽は此処に来てしまったのだから。
京楽は一度書庫を一通り見渡した。見る限り、人はいない。が、気配は感じる。そもそも瀞霊廷内でゆうりの霊圧は全く感じられないのだ。何か特殊な道具を使っている可能性は無くはない。彼はふと静かに笑顔を浮かべるとわざとらしく声を大にして話し始めた。
「居ないなら仕方ないねぇ。あぁ、そうだ七緒ちゃん!ルキアちゃんは既に懺罪宮に移動されたって知ってた?」
「はぁ…数日前の話ですので。」
「双殛を使うらしいねぇ。随分大掛かりだと思わない?七緒ちゃん、見た事もないでしょ。」
「そうですね…というか、声大きくありませんか?」
「そうだったかな?ごめんごめん。それじゃあ持ち場に行こうか。あんまり離れてると、山じいに叱られる。」