第10章 尸魂界突入編
「…致し方ないの…。隊首会はひとまず解散じゃ!市丸の処置については追って通達する。各隊、即時廷内守護配置についてくれい!」
山本の一言で隊長達は一斉に部屋を後にする。市丸だけが足を止め、相変わらずのにやけ顔で居ると傍を通り抜ける藍染が静かに囁いた。
「随分と都合よく警鐘が鳴るものだな。」
「…ようわかりませんな。言わはってる意味が。」
「…それで通ると思ってるのか?僕をあまり甘く見ない事だ。」
そんな会話が交わされているのを、日番谷は何も言わずただジッと見詰めていた。
瀞霊廷内で各隊、指示通り配置つき侵入者を探す一方、ゆうり達はといえば空鶴の用意した花鶴大砲によって空高く打ち上げられ、全員を取り囲んだ砲弾は物凄い勢いのまま地面と平行に飛び続けながら一直線に瀞霊廷へと向かっていた。霊珠核へそれぞれが均等に霊力を注ぎ、岩鷲が花鶴射法の二番、"継の口上"を必死で読み上げる。
が、集中を乱した彼は同じ行を2度読み上げたりと全く安定しないままいつの間にか瀞霊廷へと辿り着いてしまった。
1番に隊舎を飛び出した更木はうんざりした顔で歩く。その肩にはいつの間にか草鹿が乗っている。
「あ〜〜〜〜〜〜っ!!何だよ結局明け方まで捜しまわっても何も居やしねぇじゃねぇか!」
「残念だったねぇ…。」
「あ?何の音……だ…」
無駄足かと諦めた刹那、まるでジェット機のような轟音が空から聞こえてきた。音に釣られ顔を上げると、そこには謎の球体状の物質が瀞霊廷目掛け落ちてくる。気付いたのは更木達だけではない。瀞霊廷各所で待機する死神たち全員が空を仰いだ。
「な…何だあれ…?」
「落ちてくるぞ!みんなを少し下がらせてくれ雛森君!」
「は…っはい!」
「こ…こっちに来るぞ!」
「逃げろ!!」
得体の知れないそれに、隊長は部下を護り、隊士達は退いた。球体は軈て遮魂膜にぶつかり動きを止める。本来であれば膜にぶつかった霊子体は跡形もなく消える筈だが、砲弾は消えるどころか強引に瀞霊廷内へと侵入を試みる。
「ぶつかった!」
「しゃ…遮魂膜にぶつかって止まってるぞ!」
「あそこに衝突しても消滅しないとは…それほどの密度をもった霊子体だということか…!」