第10章 尸魂界突入編
日番谷は、彼女が何故瀞霊廷へ戻らず現世から来たとされる旅禍達と共に、突如姿を現したのかが理解出来ず眉を寄せ顎に手を添えた。白哉は、彼の言葉を疑い横目に流しみるものの、市丸はさも当然とばかりに首を振る。確かに、彼が今までゆうりに執着していた姿を知っているが故間違えるとは思えない。
「へェ…あの女、生きてやがったのか。旅禍としてこの瀞霊廷に来るっつーなら斬っても文句はねェよなァ…?」
「待った待った、ゆうりちゃんは殺しちゃダメでしょ。あの時の事件、まだ解決してないんだしさ。」
「うむ…。本に染谷ゆうり元十番隊第三席が生きておるのじゃとしたら、捕えるのが最優先じゃ。……じゃが、あまりにも抵抗が激しい様であれば致し方なし。」
「ま……待ってくれ!!ゆうりが本当に死神を殺したと思ってるのか!?」
「何を言っているんだネ、日番谷隊長。キミの部下の死神たちに残された斬痕からは確かにあの小娘の霊圧が残っていた、と再三説明しただろう。」
「だけど……」
「それを本人の口から聞く為の捕縛じゃ。」
「……はい。」
「…参ったね、こりゃどうも。」
まだ何か言いたげな日番谷は有無を言わせない山本の視線に押し黙った。事態が複雑化していく事に京楽は溜め息をつく。どうにも、怪しい。市丸が…という訳では無い。
そもそも何故ゆうりちゃんが旅禍達と行動しているのかが分からない。ルキアちゃんを救う、という目的なのは分かるが、彼女は現世でルキアちゃんと接触していたという事かね…。
考えても答えは出て来ない。それに、彼女がこの地に攻め込んでくるとなれば話はまた随分変わってくる。何せゆうりはこの地を知り尽くしており、少なからず三席になれる程の力を有しているのだ。捕らえるにしても殺すにしても、容易ではない。隊首室に沈黙が走る。その時だった。
「緊急警報!!緊急警報!!瀞霊廷内に侵入者有り!各隊守護配置についてください!!」
「!!」
「何だと!?侵入者…!?」
「まさか…例の旅禍か!?」
「おいっ!待て剣八!まだ…」
瀞霊廷内全域でけたたましい警鐘が鳴り響いた。当然隊首会は一時的に中止となり辺りは騒然とする。更木は口元に笑みを浮かべ、藍染の声も聞かずいの一番に一番隊から飛び出して行く。