第10章 尸魂界突入編
「いややなあ、まるでボクがわざと逃がしたみたいな言い方やんか。」
「そう言っているんだヨ。」
「うるせえぞ涅!今は俺がコイツと喋ってんだ!すッこんでろ!俺に斬られてぇなら話は別だがな!」
「…下らぬ。」
「やれやれ…。」
「……。」
マユリと更木の間でもヒートアップしてくれば、いよいよ二番隊隊長、砕蜂は旅禍の件も含めさぞ興味無さそうに溜息をつき八番隊隊長、京楽春水は竹傘を下へ下げ表情を隠し六番隊隊長、朽木白哉は静かに瞼を下ろした。
好き勝手言い合いを始め、収拾がつかなくなってくると口を開いたのは山本だった。
「ぺいっ!」
「「!!」」
「やめんかいみっともない!更木も涅も下がらっしゃい!…じゃがまぁ今のでおぬしがここに呼ばれた理由は概ね伝わったかの。今回のおぬしの命令なしの単独行動、そして標的を取り逃がすという隊長として有るまじき失態!それについておぬしからの説明を貰おうと思っての!その為の隊首会じゃ。どうじゃい。何ぞ弁明はあるかの。市丸や。」
普段おおらかな表情をしている山本の瞼がひっそりと持ち上げられ鋭い眼光が覗き市丸を捉えた。それでも彼は眉一つ動かさず、あっけからんと答える。
「ありません!」
「…何じゃと?」
「弁明なんてありませんよ。ボクの凡ミス。言い訳のしようもないですわ。……ーーーあぁ。でももし何か理由を付ける必要が有る言うなら、一つだけ心当たりあるわ。」
「…言うてみよ。」
市丸は一通り隊長達の表情を確認する様に見渡した。一体何を言い出すのかと面々は言葉を待つ。彼は薄い唇をゆっくりと開く。
「……元十番隊第三席、染谷ゆうりに会いました。死んだ思うてたんで、動揺して殺し損ねました、って所ですかね。」
「「「!!」」」
数名の隊長が目を見開く。もう数十年単位で聞くことのなかった名前だった。
染谷ゆうりは生きている。そのたった一言が、半数以上の隊長格を動揺させた。
「アイツ、生きているのか…!?でも、何でわざわざ旅禍として…。」
「…見間違いでは無いのか?」
「ボクがゆうりを見間違うわけ無いですやん。」