第10章 尸魂界突入編
ゆうり達が空鶴達の元へ訪れているのとほぼ同時刻。瀞霊廷では緊急招集の鐘が鳴り響いていた。
市丸が大きく"一"と書かれた厳格な扉を見上げ口元に緩い笑みを浮かべていると、重々しい音を立てて開く。
「…来たか。さあ!今回の行動についての弁明を貰おうか!三番隊隊長ーーー市丸ギン!!!」
部屋の最奥の中心には一番隊隊長、山本元柳斎重國が杖に手を置き立っている。彼を先頭に両サイドには二番隊から十二番隊までの隊長が整然と並んでいた。一般の隊士であれば卒倒してしまいそうな威圧感だが、同じ隊長である市丸は余裕のある飄々とした顔で部屋の中へ足を運ぶ。
「何ですの?イキナリ呼び出されたか思うたらこない大袈裟な…尸魂界を取り仕切る隊長さん方がボクなんかの為にそろいもそろってまァ……ーーーでもないか。十三番隊長さんがいらっしゃいませんなァ。どないかされはったんですか。」
「彼は病欠だよ。」
「またですか。そらお大事に。」
「フザケてんなよ。そんな話しにここに呼ばれたと思ってんのか?」
たいした興味も無いくせに、十三番隊隊長の所在を聞く市丸へ九番隊隊長、東仙要が淡々と答える。緊迫した空気にも関わらずへらへら笑いながら隊長達の間を歩く彼に十一番隊隊長、更木剣八が不機嫌そうに声を掛けた。市丸は足を止め、更木へ顔を向ける。
「てめぇ、一人で勝手に旅禍と遊んできたそうじゃねぇか。しかも殺し損ねたってのはどういうワケだ?てめぇ程のやつが旅禍の4.5人殺せねぇ訳ねぇだろ。」
「あら?死んでへんかってねや?アレ。」
「何!?」
「いやァ、てっきり死んだ思うててんけどなァ。ボクの勘もニブったかな?」
片方しか無い瞳でジロリと睨み付けて来る更木を意に介さず彼は手の掌で項を搔く。あまりに白々しい態度に苛立ちを隠さなかったのは、周りに居る隊長殆どがそうであった。
「…クク…猿芝居はやめたまえヨ。我々隊長クラスが相手の魄動が消えたかどうか察知出来ないわけないだろ。それともそれができないほど、君は油断してたとでも言うのかネ!?」
「…始まったよ、バカオヤジ共のバカ喧嘩が…。つきあいきれねーな。」
十二番隊隊長、涅マユリが追及を深めると隣に立っていた十番隊隊長、日番谷冬獅郎が面倒臭そうに息を吐いた。
市丸はマユリの方へ振り向き、常変わらない不気味な笑顔を見せる。