第10章 尸魂界突入編
「俺はその時まだガキだったから詳しい事は憶えてねえが絶対忘れねえことが2つだけある!ボロボロになって死にかけた兄貴をウチまで引きずってきた鬼みてぇな死神の顔と!そいつに最後に嬉しそうに礼を言った兄貴の顔を!…俺には兄貴が何でそんなことをしたのかわからねぇ…。けど一つだけ言えるのは、兄貴は最後まで一度も死神共を憎みも嫌いもしなかったって事だ!俺は知りてぇ!どうして兄貴は最後まで死神を憎まなかったのか!どうして兄貴は最後まで死神を信じてられたのか!」
「!!」
「てめぇは他の死神とは違う!そんな気がする!」
岩鷲は一護の胸倉を掴み顔を近づけそう告げた。どうやら空鶴とゆうりが地上で話している間彼らの中でも何かあったのだろう。
真実を知らぬ彼にとって、こんにちまで兄の死は理解が出来ぬものだったらしい。それを知りたいと願っている。行き着いた先、どんな結末が待っていても彼は受け入れられるのだろうか。そんな想いでゆうりは空鶴に視線を送った。しかし彼女は首を横に振るだけで、これから助けに向かう人物に関して何も言わない。
「てめぇについてけば何かわかんじゃねえか、そんな気がする!だから俺はてめぇを手伝ってやる!本当の死神ってのがどういうモンなのかギリギリのとこまで行って見極めてやるよ!」
「…岩鷲くん…。」
「が…ガンジュ殿…!」
「ご立派になられて…!」
井上は岩鷲の言葉に目を見開き、銀彦と金彦は彼の目ざましい成長っぷりに両手を合わせ涙した。空鶴に至っては、そんな弟を止める気は無いらしい。ゆうりの口を塞いでいた手を離し、少しだけ嬉しそうに口角を吊り上げ笑った。
「…どうやら覚悟は決まってるみてえだな…。途中でビビって逃げんじゃねーぞ糞ガキが…!行くなら死ぬ気で行ってこい!!」
「おう!!!…あ?お?」
胸倉を掴む手を払い、今度は一護が岩鷲の胸倉を掴んだ。そして一気に引き寄せ、額同時ゴツンとぶつける。
「よろしくな。」
「…てめぇ…!」
「覚悟はいいか!もう待ったはきかねえぞガキども!!いくぜ!!!」
こうして、新たな仲間を得た一護達は今度こそルキア救出の為、瀞霊廷へと突入を決めるのだった。
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