第10章 尸魂界突入編
「はい!」
「どうした夜一さん?しっぽがよく曲がるハブラシみたいになってんぞ?」
一護のその一言に、井上、石田、ゆうり、茶渡までもが顔を青ざめさせ全員纏めて彼を見た。確かに、四楓院の尻尾は普段スラリとしたしなやかさを失い中央から先端にかけてギザギザと波打っている。
彼女は一護の言葉に瞳孔を開き獲物を狙うかの如く鋭い視線を彼へ向けた。
「何か…文句でもあるのか?」
「……いえ…いつも通り素敵なおシッポです…。」
「バカか君は!君がやったんだぞあのシッポ!」
「俺!?」
石田がひっそりと耳打ちで事のあらましを話した。一護が突如眠ってしまった際、なぜか四楓院のしっぽを鷲掴みにしたまま爆睡してしまったらしい。結果、握った跡がそのまま残りあの形状だった。
「おい、岩鷲のヤツはどうした?」
「どうしたって…あいつなら下でなにか読んでたけど?」
「ちょっと待ったあ〜〜〜〜〜!!!」
噂をすればなんとやらだ。辺り一帯に岩鷲の声が響き渡る。視線が彼へ向けられると、岩鷲は出会った時の服装とはまた別の着物に身を包んでおり、腕のオブジェに片手を添えて息を切らしている。
「ヒーローは…遅れて到着するもんだぜ!」
「…何だそのカッコウは?」
「岩鷲様専用バトルコスチュームだ!カッコイイだろ!泣いて頼んでも貸してやんねーぞ!ザマーミロ!」
「バトルコスチュームだぁ?なんで見送りのてめーがそんなカッコ…」
岩鷲は唇をへの字に曲げ黙ると、ズンズン一護へ歩み寄り、目の前で止まる。そして次に彼の口から出た言葉は、全員を例外無く黙らせた。
「俺の兄貴は!死神に殺された!!!」
「「「「!!!!」」」」
「!!岩鷲てめえっ…!」
「姉ちゃんも黙って聞いててくれっ!!」
「!」
それは、彼が今まで語らなかった彼自身が死神を憎み、嫌う理由だった。
天才だった兄。真央霊術院をたった二年で卒業し、五年の月日を経て副隊長…彼にとって憧れであり、誇りだったのだ。
「だけど兄貴は殺された!!仲間だった死神共に裏切られて!!」
「違……っ!」
裏切ったのでは無い。彼女だって辛かったのだ。…多分、今も。そう思って口を開いたが、言葉を遮るようにして空鶴はゆうりの口を掌で塞ぐ。