第10章 尸魂界突入編
「…で…できたっ!!」
「や…やったね黒崎くん!!」
「お…おォ!」
井上の声に一護は振り返る。その瞬間、膜はジリ…と音を立てて軋んだ。集中を乱した証拠だった。このままでは必ず割れる。そして、爆発する。瞬時にそれを察したゆうりは井上、石田、茶渡の服を掴み後ろに引っ張った。
「厶…!」
「きゃっ!」
「うわっ!?」
「下がってて。」
「バッ…バカ野郎!急に集中を解くんじゃねぇっ!!!」
「……え?」
ビシッ、と膜にヒビが入る。ゆうりは直ぐに両手を目の前に出し防壁を張った。直後、大きな音を立てて木っ端微塵に爆発してしまう。元々霊力の固まりだったソレは、"断空"で充分防ぐ事が出来たが爆発させた張本人に関しては当然煙に巻かれて倒れていた。爆発が収まった頃には空鶴がズカズカと部屋の中へと入り、うつ伏せに倒れる一護の頭を容赦なく素足で踏み付ける。
「ハナシ聞ーてなかったのかてめぇは!?言っただろうが"集中乱したらドカンだ"って!あァ!?言ってなかったかおれ!?なァ?」
「ハイ…たしかに仰ってましたお姉様……」
「じゃあ何か?ワザとやってんのか?」
「び、びっくりしたー…。ありがとうゆうりちゃん。」
「今、何をしたんだ…?」
「縛道の八十一"断空"だよ。鬼道…つまり霊力を使う技はコレで大抵防げるの。」
「良く咄嗟に出来たな……。」
「霊圧が乱れたからね、絶対爆発すると思った。」
何がともあれ、これで全員が霊珠核に霊力を込められる様になった。外は既に日が落ちており真っ暗だ。全員集まり、練武場にて四楓院から突入の心得を聞かされている最中、膨大な霊力を解放させた疲労からか、緊張の糸が途切れてしまったかのように眠ってしまった一護の目覚めを待ち、彼らはほんの一時の休息に身を置くのだった。
「…これからが正念場ですね。長い戦いになりそう。」
「そうじゃな…本当に良いのか?ゆうり。」
「何を今更。私が行かずして誰が藍染を止めるんですか。」
「…一人で突っ込むのは止せ。死ぬぞ。」
「肝に銘じておきます。」
一人と一匹の会話は誰に聞かれる訳でもなく静かな夜空へ溶けていく。それから程なくして、石田に呼ばれた一護が地上へと上がってきた。少し眠ったからか、顔色は良く特に問題無さそうに見える。
「よし!揃ったな!」