第10章 尸魂界突入編
「………。」
「…え…えーっと…。」
本当にそれで無事突破できるのか、そもそも打ち上げられるという事は高い位置から落下して突入するという事。生きて瀞霊廷に行けるのか…?そんな疑問があったが、声に出せる者は居ない。
「無えなら解散!地下練武場で霊力集中の練習に入れ!金彦!銀彦!連れていけ!」
「うわぁ!」
「おわー!」
「きゃあっ!」
「わっ!」
「しっかり練習しろよ!一人でも集中乱したらその場でドカンだからな!」
「何ィ!?」
空鶴がパチン、と指を鳴らせばどこからとも無く現れた金彦と銀彦が一護、井上、石田、ゆうりを抱え上げ茶渡を連れて地下へ降りて行った。
練武場に着くと井上、石田、茶渡はそれなりの膜を作る事が出来たがどうにも一護だけは全く形にならない。霊力の扱い方等殆ど知らぬまま死神になった彼にとってはある意味仕方の無い事だったが、ルキアの置かれている状況が状況なだけに急がなければ…その焦燥感が余計枷となる。
ゆうりは成果の上がらない彼を座ってぼんやり見ていた。その隣に、地下へ降りて来た岩鷲が訪れる。
「…アンタも死神だろ。その外套の下、死覇装だ。」
「えぇ、そうよ。」
「っけ、正規の死神様はこんな練習必要ねぇってか?お高くとまったもんだぜ。」
「確かに必要無いわ。私は元々鬼道が得意だから。…きっと貴方のお兄さんも必要無かったでしょうね。」
「!!お前…!」
「海燕さんにはお世話になったの、本当に……。」
このメンバーの中に己の兄を知る者など居るはずがないと思っていた岩鷲はゆうりの言葉と横顔を見て目を見開く。何故今にも泣きそうな顔で一護の後姿を見ているのかが分からない。
それ以降何も言わない彼女に口を開いて固まっていると、徐にゆうりは立ち上がり外套を脱いだ。
「…一護、私空鶴さんと話がしたいから上に居るね!」
「ん?おう!」
片手を口元にあてて一護へ向けて声を掛けた彼女は踵を返し地上へ続く階段を駆け上がっていく。向かったのは花鶴大砲の砲台だった。胡座をかいて一人酒をあおる背中を見詰める。彼女はゆうりが訪れた事に気付くと仏頂面で振り返った。
「よォ、来ると思ってたぜ。」
「あ…ええと…。」
「来いよ、一人酒にも飽きてたところだ。」