第10章 尸魂界突入編
岩鷲が一護の持つ霊珠核へ飛び掛る。しかし一護は寸手のところでパッと上に持ち上げ避けた。今度は頭の上に持ち上げられた霊珠核を奪おうとするが、再びババッと下に下げられ空振る。素直に寄越さない男に当然岩鷲も腹を立て、片頬を引き攣らせながらこめかみに青筋を立てた。
「てめぇ…やる気かコラ…。」
「おォ!取れるもんなら取ってみやがれ!!テメーに教えを乞うぐらいなら死んだ方がマシだボケ!」
ジリジリ距離を取り合う2人を見て更にキレたのは空鶴だった。いがみ合う彼らの脳天に思い切り拳が振り下ろされた。
「いい加減にしろ!!」
「…ご…ごめんなさい…。」
「なんで俺まで…。」
岩鷲に至ってはほぼとばっちりではあったが、漸く彼の手に霊珠核が収まる。両手で持ったソレに霊力を込めればフワリと柔らかく発光し、軈て光は彼一人を覆う。
「な…何だ!?」
「これが砲弾だ。」
「砲弾…。」
「いいか、よく聞け。テメーらは瀞霊廷をガードしているのは周囲に張り巡らされた瀞霊壁だけだと思ってるかもしれねぇがそいつは間違いだ。瀞霊壁ってのは尸魂界でも希少な"殺気石"っつう霊力を完全に遮断する鉱石で出来てる。だから壁に霊力で穴をあけて中に入ることはできねぇ。その上この"殺気石"ってやつは厄介な事に、切断面からも霊力を分解する波動を出しやがるんだ。つまり…瀞霊廷はその波動で空の上から土の中まで球体状の障壁が張られてるってことだ!」
「そ…空から地中まで…。」
遮るものは瀞霊壁のみかと思いきや、侵入者を阻む施設がかなりしっかりと出来ていることを知り驚愕する。そんな中へどうやって飛び込むのだろうか。
「当然、そんな所にただ飛んでっても霊子でできてるおれたちはチリになってオシマイだ。そこでコイツの出番だ!」
「ね…姉ちゃん…俺もう…疲れ…」
「ガマンしろ!」
岩鷲が作る球体状の膜を空鶴は思い切り叩く。中に居る彼は脂汗を流し疲弊した顔をしていた。おそらくこの膜を作る為に常に霊力を霊珠核に供給する必要が有るらしい。
「こいつはおれの開発した特殊硬化霊子隔壁発生装置!おまえら全員でこの球体に霊力を込めれば一時的に瀞霊廷の障壁を突き破るぐらいの砲弾が作れる!そいつをこの花鶴大砲で打ち上げて…一気に内部へ突入するって寸法だ!多少荒いやり方だが他に方法はねえ!以上だ!なんか質問のある奴!」