第10章 尸魂界突入編
「…は…花火師…!?」
「そうだ!金彦!銀彦!!上げろーーーー!!!」
空鶴が天を仰いで声を掛ける。数秒後、地上から聞こえる規則正しい掛け声に合わせて床が大きく揺らぎ、せり上がっていく。
「わあ…ッ!?」
「な…何だ!?床が上がってくる…!?」
「…て…天井が開くぞ…!!」
一体どんな仕組みになっているのか分からない。床が地上に近づいて行くと同時に天井だったものは中心から真っ二つに割れる様にして左右に開き、パラパラと砂粒や草が落ちて来る。軈て床は完全に地上へ姿を現し、周りの草原よりも少し高い位置で動きを止めた。
「どうだ!!ビビったかガキども!こいつが志波空鶴専用巨大花火台!」
「花鶴大砲だ!!」
「勝手に台座に乗るんじゃねェッ!」
「ごめんなさい!!」
意気揚々と空鶴の後ろで声を上げた岩鷲は彼女の蹴りを受け、花鶴大砲が設置された台座から転げ落ちる。空高く堂々と聳え立つその圧倒的な存在感に一同はポカンと口を開けた。
「こっ…こんな時になんの冗談を言ってるんです!?花火師だかなんだか知らないがそんなもので僕たちを打ち上げる!?どうかしてる!そんな事したら絶対に死っ」
「…だ、大丈夫?」
「……何だこれ?」
声を荒らげた石田の顔面にボウリングの球程の大きさをした何かが投げ付けられた。それなりの強度を誇っているのか、ソレは眼鏡を吹き飛ばしそのまま跳ね上げられて見事一護の手に収まる。躊躇いのない暴力にゆうりは頬を引き攣らせ、落ちた眼鏡を拾い彼に渡す。
「"霊珠核"だ。そいつに手のひら押し当てて霊力込めてみろ。」
「?……………………。…って、"霊力を込める"ってどうやるんだ?」
一護は自分の手の中に有る霊珠核へ物理的に力を込める。が、当然それで霊力が流れ込むわけも無く、珠はなんの反応も示さない。キョトンとした顔を空鶴に向ければ彼女は眉間に皺を寄せ、左手の掌に霊力を込めて見せた。
「あァ!?何言ってんだ!?そんなもんこうやって鬼道撃つ時みたいに手先に力込めりゃいいだけじゃねぇか!死神なら鬼道ぐらい使えんだろ?」
「それが…此奴は先刻話した通り俄死神でな…鬼道が全く使えぬのじゃ…。」
「何だとォ!?……ちッ、しょうがねえな…岩鷲!手本見せてやれ!」
「はい!オラ!よこせ!」