第3章 真央霊術院編
浅田に連れられ人の居ない教室に入った。ゆうりも後からおずおず入ると、途端にカシャン、と音を立てて鍵を締められる。彼は適当な生徒用の椅子に座り、ゆうりへ隣の椅子に座るよう促す。
「まぁとりあえず座れよ。緊張しなくていい。」
「はぁ…失礼します。」
「呼ばれた理由は…察しついてそうな顔だな。」
「はい、なんとなく。」
「単刀直入にいくぞ。俺が聞きたいことは2つ。まず1つ目が、誰に鬼道を習ったか。2つ目は、何故斬魄刀を所持しているか。答えられるか?」
「鬼道は誰にも習っていません。けれど、以前ここに通っていた方から教本を譲り受けました。それを読み込んで鍛錬を積んだだけです。」
「先輩、って所か…譲ってくれた奴の名前は?」
「市丸ギンです。」
「あの天才の?その教科書は持ってるか?」
「有りますよ。」
ゆうりは包の中から先程貰ったばかりのものとは違う教科書を取り出し、彼に差し出した。受取った浅田は、その教本の古びた見た目とページにびっしり書き込まれた文字に気だるげな目を僅かばかり見開かせる。
「うわー…お前真面目だなぁ。」
「そうですか?1人で暮らしてた時は、鬼道を勉強する事以外やる事が無くて。」
「つーか、ここまで鬼道熱心に勉強しておいて何故鬼道衆じゃなくて死神を選んだ?」
「尊敬している人達が死神だったからです。」
彼は数ページパラパラ教本を捲ると、それをゆうりへ返す。そして今度は、腰に下げてある斬魄刀を指差した。
「んで、これは?」
「精神世界で彼自身から渡されました。始解も出来ます。」
「はぁー、精神世界でな…今まで聞いた事ねぇ。確かに、斬魄刀から語りかけられる事はあるが実物として手元に現れた例は今まで無い。」
「そうみたいですね…。」
「一応確認だが、死神から奪った……なんて事はねぇよな?」
「有りません、断じて。」
彼はゆうりの瞳を見つめた。内側を探るかの様な視線にも感じたが嘘をついたつもりが一切無い彼女の瞳は揺るがず、彼を見つめ返す。
長くも感じる沈黙の後、浅田は頬杖をついて深い溜息を吐き出した。