第10章 尸魂界突入編
「いやはや失礼致した!夜一殿とそのお供とはつゆ知らず!ご無礼をお許し下され!」
「よい、先んじて連絡を入れなかった儂にも非はある。」
「はは!流石偉大な方はお心が広い!こちらで少々お待ちを。」
一番下まで降りるとそこには襖があり、光が漏れていた。どうやら人が中に居るらしい。ゆうりは初めて顔を合わせる、海燕の親族にドキドキと高鳴る胸を抑える。
「…金彦か。」
「はっ…はい!」
「…珍しい奴がいるなァ…!開けろ。モタモタすんな!」
「!はい!ただいま!」
ガラララッ、と音を立て襖が開かれる。部屋はとても広々としているが、家具が一切無い。そんな中、ポツンと1人の女が部屋の最奥で座っていた。海燕に良く似た黒髪、長い下まつげ、堂々とした出で立ち…間違いない、彼女が空鶴だと確信する。
「よう。久しぶりじゃァねぇか。夜一。」
「…く…空鶴って…女ァ!!?」
どうやら一護達は空鶴が女性であることは聞いていなかったらしい。彼女の姿を見て例外なく驚いて見せた。
「…なんだ?そのガキどもは?」
「…実はの空鶴。今日はおぬしに頼みがあって来たのじゃ。」
「だろうな。お前がウチ来る時は大概そうじゃねえか。面倒事か。」
「恐らくは。」
空鶴と四楓院の視軸が絡み合う。何かを探る様にも見えた。ゆうりは空鶴をただ一心に見つめる。所々見せる仕草が、表情が、どこか懐かしさを感じて胸がぎゅっと締め付けられる感覚に眉を寄せた。
「ハッ、久しぶりだなこのやり取りも!いいぜ、話せよ。面倒事は大好きだぜ。」
そう言って笑った彼女に四楓院が進んでルキア救出の事、門で返り討ちにあった事、他に侵入方法が無く彼女を頼りに来た事を端的に話した。空鶴はただ静かに話を聞きながら煙管から煙を燻らせる。
「…成程、話しは大体分かった。いいだろう、引き受けてやる。」
「本当か!」
「あァ、浦原もかんでるんじゃァ断るに断れねぇしな。ただしーー…おれはアンタの事は信用してるが、そのガキどもまで信用したワケじゃねぇ。見張りの意味も込めておれの手下を1人つけさせてもらう。異存はねぇな?」
「無論だ。」
「手下…?」
「あァ。まぁ手下つってもおれの弟だ。まだ糞ガキで使えたモンじゃねぇがな。おい!用意できたか!」
「ちょっ…まっ…」
「開けるぜ!行儀よくしろよ!」