第10章 尸魂界突入編
「その空鶴って人門を潜らずに瀞霊廷に入る唯一の手段を知ってる人なんだよね?そんなすごい人ならもっと街の真ん中でみんなにチヤホヤされて暮らしてても良さそうなもんなのにね。」
「うん…それは確かにそうなんだけどね…。」
「いや、それは無いのう。奴の性質でな。こういう場所を好むのじゃよ。人気のない閑散とした土地をな。案ずるな。奴は住む場所はコロコロ変えるが家だけはいつも同じものを作る。儂が見れば一目でそれとわかるやつだ。」
「一目で…?」
「ああ…おっ、見えてきたぞ。あれじゃよ。」
「「「こ…これは…!」」」
人気のない草原で堂々と建てられた大きな一軒家。家こそは普通だが、その門が余りにも異様だった。家の倍の高さはある人の腕の像が、"志波空鶴"と書かれた旗を持っている。最早一目で分かるとか以前の問題だ。
「なっ、一目で分かるじゃろ?フッ…今回の旗持ちオブジェは人の腕か…なかなか良い出来じゃの…。」
「す、すごい家ね…。」
「あはは…そうだね…。」
「ほれ、どうした早く来ぬか。」
若干入り難い雰囲気を醸し出す家に戸惑っていると、四楓院は気にせず歩を進めようとする。どの道行かねば活路は開かれない。意を決して彼女について行くと、突然上から声が聞こえて来た。
「待てい!!」
「何者だ貴様ら!」
「奇っ怪な出で立ちをしておるな!しかも二人は死神と見える!」
腕のオブジェから飛び降りて来たのは、2人の男だった。姿がそっくりな辺り兄弟なのだろうか。息もピッタリである。
「怪しいヤツらめ!この金彦と銀彦がきさまらを決して通しはせぬ!」
「去れ!さもなくばここで死ぬこととなろう!」
「チッ…また門番かよ…メンドクセェとこだな、尸魂界ってのは…。」
「…ん?よ…夜一殿!?」
舌打ちしながら一護は背中の斬魄刀を手に取った。言葉が通じぬならば戦うしかない。そう思ったが、金彦の視線がふと地面に降りた。一護の足元では四楓院が尻尾揺らし彼の目をジッと見る。猫の正体に気付いた金彦は直ぐに手のひら返し、一護達を家の中へと招いた。とても立派な見た目をしている家なのに、入口入ってすぐ下り階段と訳の分からない構造になっているが、それを黙々と下っていく。