第10章 尸魂界突入編
「…う…。」
「奴とおぬしの意地の張り合いなんぞに割いてやる時間などない!わかったらさっさと支度しろ!」
「…………。」
「返事!!」
「おフッ!!」
まだ不服そうな一護に今度は頭突きを繰り出した。漸く観念した一護の準備を終えると彼らはやっとの事村を後にし、長老から聞いた場所へと足を運び始めた。
村から外れ、辺りには何も無いまるで田舎のような場所をただただ歩く。そんなさなか、最後尾を歩く石田は昨日からずっと気になっていた事をひっそりとゆうりへ尋ねた。
「…染谷さん。昨日の死神が言っていたことだけど…。」
「…仲間を殺したって奴?」
「……あぁ。アレは一体どういう意味なんだ?僕らを動揺させる為に言ったのは分かる。だが、君もそれを否定しなかっただろう?」
2人の会話は、他の面々も聞き耳を立てていた。特に四楓院と一護に至っては事情を知っている故に少しばかり複雑そうな表情を浮かべる。ゆうりは人差し指で頬を掻き、ぽつりぽつりと話し始めた。
「…ギンの言っていたことは本当よ。でも意識的に殺したわけじゃないの。虚は色んな能力を持っていてね、私が対峙したのは、幻覚を見せて来る虚だった。」
「幻覚?」
「うん、味方の死神を虚と錯覚させられて…気付かず私は2人の死神を殺した。虚は確かに討伐したけれど、私以外その場に誰もいなかったから、私が幻覚を見せられて仲間を殺したかどうか証明出来る人も居なくて………それで現世に逃げて来たの。ごめんね、こんな大事な事黙ってて。」
「そういう事か…。」
「あたしは…あたしは、ゆうりちゃんが故意に仲間を傷付けるなんて思えない。だから、そのお話を信じるよ!」
「そうだね、僕の知る限りでも君が誰かを裏切るとはあまり考えられない。どちらかといえばあの銀髪男の方が胡散臭い雰囲気があったしね。」
「厶……。」
「…ありがとう。」
茶渡は井上と石田の言葉に同意するように頷く。ここまであっさりと自分の昏い過去を受け容れられるとは思っておらず、ゆうりは不器用に笑う。…いい仲間を持った。そんな想いで胸が暖かくなった気がした。
「しっかし、何時になったら見つかるんだ?だいぶ村からは外れただろ。ほんとに道合ってんのか?」
「地図だとこの辺りの筈だ。」