第10章 尸魂界突入編
「黒崎くん!大丈夫!?黒崎くん!!」
「黒崎!!」
「黒崎く…」
市丸の攻撃で流魂街まで飛ばされた一護はうつ伏せに倒れたまま動かない。心配した井上、石田、茶渡が駆け寄ると斬魄刀を握る右手がピクリと揺れた。
「痛ってぇっ!!!ちくしょー何だよあの野郎!危うくケガするところだったじゃねぇか!くッそいってー!!」
「げ…元気そうだね…ていうか…ケガ…ないんだ?」
突然ガバリと身体を起こしたかと思えばこめかみに青筋を立てたままブツブツと文句を零す一護に井上達は苦笑する。
あれだけ思い切り弾き出されたにも関わらず、無傷で居る一護に石田は驚きを隠せなかった。10日間で、こんなに変わるとは…。
「無事で何よりじゃ一護。」
「夜一さん。…悪い、俺のせいで門が…。」
「いや、おぬしを責めても始まらぬ。門は再び閉ざされてしまったが相手がヤツではおぬしが飛びかからずとも同じ結果じゃったろう。おぬしに怪我が無いだけでも良しとせねばな。」
ザリ、と砂利を踏み締める音に一護達は後ろを振り返る。戦闘が一段落した所で、家に隠れていた西流魂街の魂魄達が姿を現し始めたらしい。
ゆうりは兕丹坊の帯から手を離し四楓院達の元へ身を寄せる。彼は腕を切断された痛みからか、既に気を失っていた。
「人だ…。」
「なんだこいつら?今まで隠れてたのか?」
「なんで…?」
「死神の導き無しで不正に尸魂界へ来た魂魄は"旅禍"と呼ばれるの。尸魂界ではあらゆる災厄の元凶とされるわ。」
「その通り。彼等が儂らを恐れて身を隠すのも道理というわけじゃ。」
「…敵なのか?」
「さあな。じゃが、こうして姿を見せたという事は儂らに対していくらか心を許したということーー…」
「す…すみません!とおして下さい!すいません、とおして!お…おじちゃん!久しぶり!ぼくだよ!インコのシバタだよっ!!」
「!」
「し…シバタ!?」
人の隙間を縫う様にして一護達の前へ姿を現した、茶髪少年が元気よく手を振った。珍しく茶渡の表情が変わる。
インコのシバタとは…?事情を知らぬゆうりと井上、石田は睫毛を瞬かせたがどうやら一護らの知り合いにあたるらしい。
それから茶渡はシバタを肩車しながら流魂街の中を歩き、残った面々は長老の部屋へと招かれた。