第10章 尸魂界突入編
「何する気だよ、そんな離れて?その脇差でも投げるのか?」
「脇差やない。これがボクの、斬魄刀や。
射殺せ"神鎗"。」
一護から数メートル距離を取った市丸は、斬魄刀を持った右手を持ち上げた。素早い所作で片足と右腕を引き、思い切り刀を突き出す。すると持っていた刀の刃は先程兕丹坊の腕を吹き飛ばした時と同じ様に一護へ向かい勢い良く伸びる。ゆうりはこのままでは、巻き込まれる事を察し真後ろにいる兕丹坊の帯を咄嗟に掴み瞬歩で斜め後方に飛び避けた。
一護は神鎗の鋒を斬魄刀の幅が広い側面で受け止めるが伸びる勢いに抗えず、門の外へと押し戻されていく。
「く…黒崎くん!!」
「黒崎っ!!」
「!!しまった!!」
全員、外に吹き飛ばされた一護に気を取られ門から背を向けた。一護を瀞霊廷から追い出した神鎗は執拗に彼を殺そうとはせず程々に長さが元に戻って行く。支えを失った門は当然重力に従いゆっくりと下り始めた。
「門が下りる…!!」
「バイバーーイ♡」
閉じる寸前、屈んだ市丸が意地の悪い笑顔と共にヒラヒラと手を振る。無慈悲に閉ざされた門を再び開けることは現状叶わない。それに、自分達のせいで大きな怪我を負った兕丹坊を放置する事も考えられない。
ふりだしへと戻されてしまった彼らは悔しさに表情を歪め、1度この場に留まり新たな作戦を練る事を決意するのだった。
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