第10章 尸魂界突入編
「けど…せやな、その子、コッチに引き渡しはるなら考えんでも無いよ?」
「俺たちはルキアを助けるために来たんだよ、それなのにゆうりまで渡すわけねえだろ!」
「そら困ったなぁ。ゆうりは仲間である死神を殺した…尸魂界にとって罪を犯した重罪人、ルキアちゃんと同じく裁かれるべき死神なんやから。こっちに返してもらわんと困るんやけどね。現世も尸魂界も同じやろ。悪いコトしたら、裁かれる。」
「えっ…?」
「染谷さんが罪人…?どういう事だ…?」
「死神を、殺した…?」
「…辞めて、そんな言い方するの。」
「あれ、そっちのお友達は知らんようやなぁ?その子が何で現世に居ったと思うてはるの?ゆうりは部下の死神自分で殺して、逃げ出したんやよ。」
事実を知っている一護は動揺する事が無かったが、彼女が現世に留まっていた理由を聞いていない井上と石田、茶渡は少なからず驚いた。ゆうりが元々己の味方である死神を殺した、それが信じられない。けれど彼女自身それを否定しない。
市丸は態と、井上達の動揺を誘うべく口に出した。仲間内で疑心暗鬼になると、自ずとゆうりの居場所は無くなる。そうなってしまえば、孤独を何よりも嫌う彼女はこちら側に頭を垂らすかもしれない。
ゆうりは斬魄刀を握り直し、奥歯を噛み締めた。
「…貴方、わざと私の知られたくない過去を語る事で、織姫達の信頼を下げようとしているでしょう…。」
「言葉もひとつの武器やよ。"これからの戦い"を見据えるなら、覚えとき。キミが相手にするのは虚やない。ボクら"死神"や。」
「………。」
それは、ルキア奪還を指しているのかそれとも自分のことを示唆しているのか分からない。ただ彼の言う事は正しい。ゆうりは細く息を吐き出し気持ちを落ち着ける。そうだ、相手が死神だからこそ…言葉の通じる相手だからこそ冷静にならなければ。
「ゆうりは、自分の都合が悪なると味方を殺すことも厭わない恐ろしい子やよ。連れて行くなら、相応の覚悟しや。」
「あーーもーーゴチャゴチャうるせえ!!お前の相手は俺だって言ってんだろ!ゆうりは関係ねぇ!」
「元気ええね。…そこまで言うなら、相手したるよ。」