第10章 尸魂界突入編
「「「う…ぉぉおおお!!」」」
「………。」
「どうしたのじゃ、ゆうり。」
「…すぐそこに、隊長格が一人…。」
「何…?」
門は確実に持ち上げられた。豪快に開く門に一護達は感嘆の声を上げるが、ゆうりだけはそう楽観的ではいられない。
門の中から感じる霊圧…。この男、ここから侵入してくる事を予測していたの?でもどうやって?…いや、考えてる場合じゃない。ここは一旦引かないと。
「す…すげえ…」
「…こんなのが持ち上がっちゃうなんて…」
「…?…どうした?何止まってんだ?何かあったのか?」
「…あ…ああ…ああああああ……。」
「門を閉めて兕丹坊!!」
「なッ…ゆうり!?何言って………誰だ?」
兕丹坊の奥から揺らりと姿を現す、私と同じ銀色の髪をした男。真っ白な隊首羽織。いつ見ても変わらないにやけ顔。その全てが懐かしく、かつ恐ろしい。
「さ…三番隊隊長…市丸ギン…。」
「あァ、こらあかん。」
彼が小さく声を上げたその刹那、一瞬にして兕丹坊の片腕が吹き飛ぶ。市丸が何をしたのか、何が起こったのか見えたのはゆうりと四楓院だけだった。本来、斬魄刀は始解する前は長さは同じ。しかし彼の手にある斬魄刀は脇差程の長さしかない。つまり彼は、元々ここで迎える気満々だったらしく既に始解していたのだ。短い斬魄刀はほんの一瞬で兕丹坊の元まで伸び、逞しい腕を難なく斬り飛ばす。
「…あかんなぁ…門番は門開けるの為にいてんのとちゃうやろ。」
「ぶはっ、はっ…はーーっ、ばはーーっ!…う…があああああああああああ!!」
「な…何だ!?今…今あいつ何をした!?」
脈動に合わせおびただしい量の血が吹き出す。筋、骨、神経を全て断たれた痛みは計り知れない。それでも兕丹坊は門を閉ざすこと無く、片膝を着き片腕と肩で門を支える。
「ふッ!!はーーーっ、はぁっ、ぶはぁっ!はーーっ!」
「おー、片腕でも門を支えられんねや?サスガ尸魂界一の豪傑。けどやっぱり、門番としたら失格や。」
「…………!!オラは負げだんだ…負げだ門番が門を開げるのは…あたまり前のこどだべ!!」
「ーー何を言うてんねや?わかってへんな。負けた門番は門なんか開けへんよ。門番が"負ける"ゆうのは……"死ぬ"ゆう意味やぞ。」