第10章 尸魂界突入編
「…黒崎くん…!」
「終わりか?」
激しい破壊音が響いていたにも関わらず、その的だった筈の一護は今もかすり傷すら見当たらない。今まで己の攻撃をこれほどまで受けて、文字通り立っていた人物等居なかったそれを、こんな小さく細い身体で全て受け止められた事が兕丹坊は信じられなかった。
「じゃあ、次はこっちから行くぜ…!」
「!!ま…まだだ!まだだど!まだオラの技はおしめえじゃねえど!!」
「!!二本目の斧…!!」
「ぬぅん!うぬぬぬぬぬぬぬ〜〜!!!」
懐から取り出された同じ形をした斧を掲げ、側面同士を重ねて力を篭める。元々太い腕を張り上げ、隆起した筋肉により肩の鎧を砕く。兕丹坊は最大の力を込め斧を持ち上げた。
「受げでみろ!!オラの最後の必殺技…万歳兕丹打祭!!」
「悪ぃ。潰すぜ、その斧。」
振り降ろされるそれを一護は焦りひとつ見せず見詰めた。斬魄刀をしかと握り直し、自分へ向けられる斧目掛け勢い良く振るう。金属同士のぶつかる音と共に、兕丹坊の持っている斧が柄を残し砕かれ、斬撃の勢いに兕丹坊の身体が後方へとひっくり返る。背中から地面に倒れた彼は何が起こったのか理解が追い付かず目を見開く。しかし、それは井上達も同じだった。気が付いたら、兕丹坊が倒れており一護が平然と立っている。勝負がついた事を悟り、ゆうりは地に降りた。
「…な…何だ…?」
「く…黒崎の奴、今なにやった…?あのデカいやつが…ふ…吹っ飛んだぞ…!?」
兕丹坊は我に返ると足を腹側にグッと引き勢いを付けて立ち上がる。斧が砕かれただけで彼自身に怪我はないらしい。ピンピンしていた。
「ぶはーーーっ!あ…あぶねえあぶねえ!オラとすだこどがうっかりすべって尻もぢなんかついちまっただ!あっ!?なんだお前えその顔!?さではお前え今オラが吹っ飛んだと思ってんだべ!?ははっ!!何言ってんだお前え!オラが吹っ飛ぶなんてそっだらこどあるわけねえべ!まっだぐ、これだから田舎モンは困んべな〜!まっでろよ〜今もっかいオラの…斧で……。」
手に持っている、かつて斧であったものを見て彼は固まる。どっちを見ても刃がない。冷や汗が身体中から噴き出す。
「お…斧っ!?オラの斧!?オラの斧がっ!?…オラの……斧がぁ…!」
「な…」
「ご…っ壊れぢまっだ!壊れぢまっだ!オラの斧が…壊れぢまっだあ゛あ゛あ゛あ゛!」