第10章 尸魂界突入編
兕丹坊の独特な形をした大きな斧が地面に振り下ろされる。ズドン!と豪快な音を立てながら刃が地を抉ると、同時に土煙が舞った。ゆうりは外套のフードが落ちぬ様片手で摘む。
「ぐふふふふふ…さあ!どっがらでもかがっで来い!小僧!!」
「で…でかい…!なんだアイツ…!?あんなの人間の大きさじゃない…!一体何者なんだ…?」
「兕丹坊よ。尸魂界全土から選び抜かれた豪傑の一人で、この四大瀞霊門の西門…"白道門"の番人なの。」
一護と兕丹坊が向かい合う姿を遠くから見ていた石田の頬に汗が伝う。まだ瀞霊廷に侵入すらしていないのに、まず入口を守る門番が規格外の大きさなのだ。まさか、中の死神もこんなデカブツばかりなのか!?そんな嫌な考えが過ぎる。
「番人…てことは…中に入るにはあいつを倒すしかないって事か…。」
「あぁ。じゃがそう容易いことでは無いぞ。なにしろ奴がこの任に就いてから三百年…奴が守る"白道門"だけは1度たりとも破られた事が無いのじゃからな!」
「そ…そんなに強いんですか…。」
「ああ。その斧一振で30体の虚を打ち殺した事もある伝説的な剛力の持ち主じゃ。」
「…そんな奴とどうやって戦えば…。」
「そこは知恵の見せどころじゃよ。ここはひとまず一護を呼び戻して皆で作戦を練った方が良かろう。おい!一護!」
「そんな事しなくても、多分大丈夫だと思うけどな。」
「……染谷さん?」
「だって、兕丹坊に負ける程度じゃ瀞霊廷の中にいる隊長…いや、副隊長の誰一人にも勝てないわ。ここは一護に任せ……あっ。」
「コラーーーッ!織姫!チャド!儂の話を聞いとらんかったのかおぬしら!?戻れっ!もーどーれーっ!!」
ただ一護を助けたい、その一心で彼の元へ駆ける2人にゆうりは小さく"あーあ…。"とだけ声を漏らし四楓院は声を荒らげた。しかしこの中で誰よりも彼らの介入を拒む者がいる。兕丹坊は右手に持った大きな斧を振り上げ地を叩く。すると岩盤がめくれ上がり普通の人では到底乗り越えられない大きな壁を作った。
「…な…」
「…な…何だよあれ…!?一撃で…岩盤がめくれ上がって…壁を作りやがった……!!」