第10章 尸魂界突入編
「いいわけがあるか!!」
笑顔で両手を合わせた井上の右目を四楓院の頭が思い切りどついた。彼女は思わぬ攻撃に目を抑えて痛みから涙を流す。
「…………。」
「おぬし儂の話を聞いとらんかったのか!?拘突に触れたのが盾部分だったからよかったものの、六花本体が触れておったらおぬしの命は無かったぞ!!ゆうり!!おぬしも斬魄刀を使うなと言うたじゃろう!!」
「「ご…ごめんなさい…。」」
「良いじゃねぇか、そんな怒らなくても!結果的に石田は捕まらず済んだし、全員無キズだったんだしよ!」
「おぬし…事の重大さが分からぬ様じゃな…」
「!おい!土煙がはれてきたぞ!」
石田の声に辺りを見渡した。土煙が収まるとそこは紛れも無く尸魂界なのが分かる。昔ながらの建物が幾つも建っているあたりここは流魂街なのだろう。
「こ…ここが尸魂界か…?」
「そうじゃ。」
「ここは"郛外区"。俗に"流魂街"と呼ばれる場所よ。尸魂界へ導かれた魂が最初に住まう場所で、"瀞霊廷"の外縁に位置するの。」
「尸魂界の中で最も貧しく、最も自由で、最も多くの魂魄が住まう場所じゃ。」
「へぇ…その割には人影が全然…」
「あれっ、何だ?あっちの方はずいぶん街並みが違うじゃねぇか。」
「あぁ、あれが…」
「わかった!あっちが死神たちの住んでるナントカって街だな?」
「!!」
一護は瀞霊廷を見付けるなり四楓院の言葉を最後まで聞かず走り出す。無邪気な子供さながらな彼に四楓院は尻尾を立たせ叫ぶ。
「ば…ッ、莫迦者!迂闊にそちらへ近付くな!死ぬぞ!!」
「え?」
瀞霊廷まであと一歩、という所で一護は立ち止まる。その瞬間空から大きな木の板が何枚も降ってきた。地面にそれが突き刺さる振動で一護の身体はポンと跳ね上がる。
「黒崎くん!」
「う…わあああっ!?」
落ちてきたそれは瀞霊廷を護るようにして流魂街との間に壁を作った。再び土煙が舞い視界が曇る。
「ごほっ、げほっ…」
「…久すぶりだあ…通廷証もなすにごの瀞霊門をくぐろうどすだ奴は…」
「あれは…」
「久々のオラの客だ!もでなすど小僧!」
板と共に落ちてきたのは一護より何倍も大きい巨漢の男は変わった形の斧を片手に一護を見下ろす。尸魂界に辿り着いたばかりの彼らに、1つ目の試練が襲い掛かるのだった。
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