第10章 尸魂界突入編
「待て!!斬魄刀を使うな!拘流は霊体を搦めとる!斬魄刀を振るえばそれごとお主もとらわれるぞ!」
「じゃ…じゃあどうすりゃ…」
一護の隣をゆうりが横切った。彼女は腰に差した斬魄刀を抜くと目にも留まらぬ動きでソレを振り上げ石田のマントを切り裂く。余りに一瞬過ぎて理解が出来なかった。ゆうりはそのまま斬魄刀を納め、隻手で石田の手を掴み引っ張る。
「え…?あ…ありが……」
「ほら、早く走って!」
「お、おう!」
「無茶しおって、儂の話を聞いとったのか!」
「搦め取られるより速く斬れば良いかと…。」
「…ま、待ってくれみんな…何か…何か来てるぞ…!!」
必死で走っているさなか、石田は何かの違和感を感じ振り返りながら走った。拘流の中に、何か黄色い光がぼんやりと見える。アレは何だ…?
その答えは直ぐに出た。ごぽっ、と音を立て大きな拘流の塊の様なものが背後に現れる。それは崩れる壁よりも速く一護達を追い立てた。
「な…何だこいつは!?」
「"拘突"じゃ!七日に1度しか現れぬ"掃除屋"が…何も今出ずとも良いものを!とにかく逃げろ!此奴は恐ろしく速いぞ!急げ!じき出口じゃ!」
更にスピードを上げてただ走る。しかしそれよりも物凄い速さで拘突は追いかけて来る。少し先に出口が見えた。希望と同時に、すぐ後ろまで絶望は迫って来る。
「ダ…ッ、ダメだ…!追いつかれ…」
「!?井…」
「火無菊 梅厳 リリィ!"三天結盾"!!"私は…拒絶する"ッ!!」
体ごと振り返った井上は盾を張り、拘突の直撃を防ぐ。ただ、拘突自体の勢いが止まる事は無く盾1枚を隔て5人と1匹は無理矢理断界の外へと弾き出され、そのまま一直線に地面へと吹き飛ばされていく。そして最終的に盾を地面に、無事着地を果たしたのだった。
「ぷうっ!だいじょうぶ!?みんな!わあっ!黒崎くんの着地姿勢芸術的!!」
「うるせぇよ。」
仰向け状態で両足を頭側へ伸ばす姿勢で着地した一護を見て井上はキラキラした目で彼を見た。石田はズレた眼鏡を直しながら身体を起こし、普通に片膝を立てて着地したゆうりと茶渡は鞄を拡げる石田を視線で追う。
「痛…全く…酷い目に遭ったな…予想外だこんなの…まさかこんなに早く替えのマントを使う羽目になるなんて…」
「でもよかった!誰もケガないみたいで!」