第10章 尸魂界突入編
「ゆうりちゃんって……浦原さんと付き合ってるの…?」
「そんなんじゃないよ、今はね。」
「今は……!」
「集中せい、莫迦者!」
声を上げそうになった所四楓院に叱咤され井上は自分の口を両手で覆い抑えた。浦原と握菱は門の両側に片膝をついてしゃがみ込む。おそらく鬼道を使い穿界門を開けるのだろう。地に着いた手から青く強い光が放たれた。
「用意はいいっスか?開くと同時に駆け込んで下さいね。」
「わかった。」
「んんんーーー!!んんんんんんんん!んんんフ!んんんフ!」
いつの間にか、体を縄で、口は喋れないように布で縛られたらしいコンがじたばたと暴れる。一護はそんな彼へ視線を落とす。
「…コン!」
「…!」
「…家の連中の事よろしく頼むな。」
それだけ言った彼は振り返らなかった。
残る4人も、もう背後に意識を向けることは無い。ただまっすぐ、穿界門を見つめる。
「いきます!!」
「おう!!!」
穿界門が、カッと強い光を放った。同時に四楓院を先頭にして5人は扉の奥へと駆けていく。光の中へ飲み込まれてゆく背中を、浦原はただ見守り、祈る事しか出来なかった。
「ーー…!」
「…ここが…」
「…断界…!!」
穿界門をくぐり抜けた先は、現世で見たことも無い様な世界だった。細い道の両側には紫色の煙が壁を作り、巨大なヒトの骸が通ってきた門の入口を彩っている。
「惚けるな!走れ!!」
「壁を作っているのが拘流よ。みんな急いで。壁、崩れてくるから。」
四楓院とゆうりが走り出すのを見て、4人も直ぐに走り始めた。途端、後ろの壁がまるで追い掛けてくるかのように雪崩を起こしながら崩れて行く。
「ほ…っ、ホントに壁が追い掛けてくるぞ!僕たちが走り抜けたところがどんどん崩れてきてる!」
「振り返る暇があるなら1歩でも進め!拘流にのまれればお終いじゃぞ!!」
「うわぁ!」
「きゃっ……」
ドシャッと横の壁が崩れた。咄嗟に井上と石田は避け、誰も大事にはならず、よろめきはしたが走り続ける。しかしどれだけ必死に走ろうと拘流は待ってくれない。1番後ろを走っていた石田のマントの裾を、紫色の煙が搦め取る。
「え?うわ!?」
「石田ッ!?バカが!変な服着てくるからだ!」