第9章 現世編(後編)
「……なんだか複雑な気分だな…私の斬魄刀の筈なのに、別の人のものみたい…。」
『…僕はゆうりにもう一度逢えて嬉しいよ。主を失う哀しみは二度と味わいたくない。生きてくれ、ゆうり。諦めずに、最後まで。』
胡蝶蘭は彼女の片頬へ手を伸ばし優しく撫でた。その瞳がとても寂しそうに見えて、ゆうりは眉を下げ頬に添えられた手に手を重ね握る。
「…辛い想いさせてごめんね。大丈夫、私は諦めないし死ぬつもりもないから。これからも貴方の力を貸して、胡蝶蘭。」
『当然だ、僕の可愛いゆうり。尸魂界に潜入してから、決して油断はしないように。』
「斬魄刀というより最早保護者っスね。」
『2人目ともなれば娘の様に感じるのも無理は無いだろう。話す事も話したし、僕はそろそろ戻るよ。じゃあね。』
そう言うと彼は現れた時と同じ様に無数の花弁に囲われ、勢いが収まると共に姿を消した。残されたゆうりと浦原は顔を見合わせ瞬きを繰り返す。
「…彼の言うことに嘘は無いでしょうねぇ。ボクが崩玉を創り出したのは100年も前です。本来知り得る事など出来ない情報を持ち合わせているという事は、並行世界とやらから来た、なんて言葉に随分信憑性が有るように思います。ただ一つ気になるのが、卍解の能力で過去に来たって点です。」
「私の卍解は強くなる、というより回帰能力の力が上がるって感じだから無理では無いのかな…?」
「………ゆうり、貴方卍解の会得を既に…?」
「あ……。え…えーっと……近々言おうと思ってたの!!」
顎に手を添え唸るゆうりに浦原は些か目を見開き彼女を見た。そういえばまだ彼に、卍解が使える事を話していなかった事を思い出し、ハッとした表情を浮かべた後誤魔化そうとぎこち無く笑う。が、彼は不満げに眉を顰めた。
「ボクには隠し事するなって言うのにアナタはするんですねぇ?」
「うう…ご、ごめん…。言おうと思ってたのは本当なんだけど中々タイミングが無くて…。」
「まぁ良いでしょ、今聞いたわけですし。それで…詳しくはどんな力なんスか?」
「言った通り、回帰能力だよ。虚になった魂魄を生前まで戻す事も出来るし、死んだ魂魄を再生させる事も出来る。もちろん条件とか色々有るけどね。現に海燕さんは出来なかったし…。」