第9章 現世編(後編)
『僕は、真央霊術院で正式に浅打としてゆうりへ付与され斬魄刀となった。そして今の現状と同じ様に藍染惣右介の裏切りに遭い、尸魂界から迫害された。その先の更に未来で僕らは彼に敗れ、ゆうりは卍解を使い僕だけを過去へと飛ばした……そうして出逢ったのが、この世界の"ゆうり"だよ。まぁ、能力の使い方が不慣れだったせいか思いの外過去へ飛ばされ過ぎて、学校に通う前に顔を合わせる羽目になってしまったけれどね。』
「敗けたって…私は……死んだの?」
『…そうだよ。頼まれたんだ、君自身に。未来を変えて欲しいって。』
「うーん、想像していたより相当突飛な話ですねぇ…。斬魄刀を過去に飛ばすだなんて聞いたことも無い。」
話を聞いた2人は揃って首を捻る。今までに前例の無い話だ。それに何か道具を使ったならまだしも、卍解の能力だという。そんなことが可能なのか?そもそも本当にパラレルワールドなんてものが存在するのか…?どうしても信じ難い。
疑いの念を抱く浦原と異なり、ゆうりは幾つか思い当たる節が無くは無かった。何より困った時、余りにも的確なアドバイスをくれるのはいつもこの男だったのだから。
「……一護を初めて見た時、すぐに名前が出てきたのは…」
『僕の記憶が触れてしまったのだろうね。』
「そっか…ずっと不思議だったんだよ…自分でも身に覚えが無かったから。でも、それならなんでもっと早く教えてくれなかったの?それに、未来が分かるならこれからどうすればいいかなんて分かるじゃない!」
『言っただろう、並行世界は選択の数だけ増えるんだ。何よりゆうりが有昭田鉢玄と接触するのはもっと先の筈だったし、それに伴って回帰能力に目覚めるのもまだまだ後になる筈だった。既にゆうりは僕の知るゆうりとは全く別の未来を歩みつつある。だから、この先君がどうなっていったのか教えるつもりは無いよ。正確ではない情報を与えた所で無意味だからね。』
「つまり、元々最初に歩んでいた世界でボクから崩玉の話を聞いていたから、知っていたって事っスね。合点はいきます。」
『あぁ…もっとも、そもそも崩玉以外の物質で虚化の実験をしている可能性も無きにしも非ずだが、あれ程強力な物質はそう無いからね。それに、朽木ルキアの霊圧が全く回復する気配が無いのを見て"これは同じだ"と思った。』