第9章 現世編(後編)
「うん、貴方に聞きたい事が有るの。」
『どうして僕が崩玉の事を知っているのか…とか?』
「話が早いっスねぇ。」
『僕はゆうりの斬魄刀だよ。聞こえているに決まっているだろう。』
小さく鼻で笑う胡蝶蘭にゆうりは小さく口をポカンと開けた。そしてみるみる顔に熱が集まるのを自覚し俯く。話が聞こえているということは、それ以前の会話も筒抜けているという事だ。もちろん浦原と口付けをしている事も彼に筒抜けているのだろう。それがとても羞恥を募らせ両手で顔を隠した。
「……知りたくない事実だった。」
『大丈夫だよ、どんな事があっても僕が介入する事は無いからね。』
「そういう事じゃなくて、聞かれてる事自体恥ずかしいよ!」
「まぁまぁ、それよりも、貴方とこれで会うのは2度目ですねぇ。聞かせて貰いましょうか。知っている事全て。」
『僕は全て教える約束なんてしていない。もう少し教えてあげる、と言っただけだ。…けれどまぁ、約束は約束だ。まずは僕の事を教えてげよう。』
ゆうりと胡蝶蘭はその場に座り浦原と向き合った。ピシリと綺麗に正座する胡蝶蘭からの言葉を待ちシンと静まる。
『…僕は君たち死神が藍染惣右介に敗北した未来から来た。』
「……ん?」
「ハイ?」
『その顔辞めろ。』
「えっ。」
『おっと。順を追って話そうか。』
どこか可哀想なものでも見る様な眼差しを受けて徐に口調が荒くなった彼に、隣に座るゆうりは信じられないものを見る目を向けた。胡蝶蘭は咄嗟に掌で口を隠し視線を外すと何事も無かった様子で続ける。
「今、口調……」
『並行世界と言えば分かりやすいかな。例えば、そうだな…今ゆうりには恋人が居ない。けれど、別の世界には誰かの告白を受け入れて既に恋人の居るゆうりが存在する。もちろん、普通他の世界に干渉する事は愚か認知する事すら出来ない。だが、ほんの些細な選択の数だけ、まるで樹形図の様にいくつもの世界線が生まれているんだよ。』
「スルーされた…。」
「はぁ…。」