第3章 真央霊術院編
檜佐木と出会ったゆうりは試験までの期間、彼にひたすら剣術の稽古をつけてもらった。逆に鬼道が得意だったゆうりは彼に鬼道を教えた。短い期間ではあったがお互いを高め合い、元々全体的に能力の高かった檜佐木と、鬼道がずば抜けて高いゆうりは揃って真央霊術院への入学が決まり特進クラスに振り分けられた。
「これから6年間ここで学ぶんだね…。」
「あぁ。絶対卒業して、死神になるぞ。」
「うん、その為に入学したんだから。」
今日は入学したばかりの彼らの顔合わせの日だった。檜佐木とゆうりは2人揃って教室に入る。貴族が多い為元々付き合いがあったのか、既に顔見知りという人も多いらしく教室は随分賑わっていた。
そんな中でもゆうりの容姿は随分人目を引くようで、凝視される事は無いがチラチラと視線を感じる。彼女もそれには流石に気が付き怪訝そうな顔を浮かべて檜佐木の袖元を掴む。
「…なんか凄い見られてる…。」
「そりゃ…まぁ、俺もお前と先に出会って無ければ多分見てる。」
「どういう事?」
「……あー…だからその…。」
檜佐木は言い方に困り後頭部を掻く。ゆうりは教えてくれるまで引かぬとばかりに言い淀む彼をじっと見つめる。檜佐木は、ゆうりの耳元へ手を添え唇を寄せるとこっそりと耳打ちした。
「ゆうりが美人だから気になってんだよ。」
「…修兵もそう思ってくれてるの?嬉しい〜。」
「お前人が折角教えてやったのに茶化すんじゃねぇよ…!」
彼は照れからか頬を若干赤く染めたがゆうりは耳元で囁かれた言葉を理解するなり無邪気にケラケラ笑った。周りで見ている生徒が、2人の仲睦まじい様子にまさか既に恋人同士なのでは、とざわつきそれを聞いていた檜佐木は少しばかりの優越感を持つ。
「何ニヤニヤしてるの?」
「別に?」
「ふーん…?」
顔を逸らされてしまい、それ以上言及する事はできなかった。それから程なくして鐘が鳴り教師が入ってきた。ゆうり達の席は隣同士とまではいかずゆうりは窓側の前から5番目、檜佐木はその列の1番前に指定される。