第9章 現世編(後編)
一護のお勉強会が終わってから数日。風呂を出て、自室の窓際でソーダ味のアイスを齧りながら、漸く返された携帯を開くとやたらメールと電話が来ていた。その中で1番上に名前があった一護へ掛け直す。
「もしもし一護?電話した?」
『あぁ、啓吾が染谷さんからメールの返事もねぇし電話も電源切ってて繋がらねえ、嫌われた!?ってめちゃくちゃ連絡来たんだけど、なんかあったのか?』
「ううん、ちょっと携帯を喜助に取り上げられてて使えなかっただけだよ。後で返信しておくわ。一護の用件は?」
『あー…そういう事か。急だけど8月1日に、井上達と祭りに行くんだけどお前も来るか?』
「お祭り、か……。」
サクッ、と軽快な音を立てて棒アイスを齧り真っ暗になった空を見上げながらゆうりは考えた。
昔…本当に昔、この町の祭りに1度だけ来た事があったな。同じ場所か分からないけど。折角だから行きたい。だけど、それよりも私は……。
「…ごめんね、出来る限り喜助と一緒に居たいの。」
『浦原さんと?』
「うん。結構前に言ったと思うんだけど…私、自分の疑いを晴らす事ができたら尸魂界に戻るつもりだから。」
『…それって。』
「現世に…というか、空座町に自由に来るのは難しくなると思う。しばらく会えなくなっちゃうから、今は喜助の傍に居たい。」
『そう、か…じゃあ、場合によっては夏休み明けには学校も来なくなるんだな…。』
「記憶を消してもらうかどうかは分からないけどそうなる、かな。まぁまだ疑いを晴らすことが出来るのか分からないから何とも言えないけどね。」
『……大丈夫だろ、ゆうりなら。』
「ふふ、ありがとう。皆によろしく言っといて。」
『わかった。』
「じゃあまた、浦原商店で。おやすみ、一護。」
『おやすみ。』
耳から携帯を離し通話ボタンをオフにしてパタンと閉じた。窓枠に手を置き浅く溜息を零す。最後になるかもしれないから、みんなと遊びたい。けれどそれ以上に、浦原の傍にいる事を望んだ。何より7日間彼は殆ど休まず1人で穿界門の準備をしてくれているのだから、遊ぶなんて気が引けてしまう。
食べ終えたアイスの外れ棒をゴミ箱に捨てて立ち上がる。部屋の襖を開けると、扉の前には浦原が胡座をかいて座っていた。彼は突然開いた事に驚いたらしく、目を見開いてゆうりを見上げる。