第9章 現世編(後編)
「…ふぅ、この"血霞の盾"が無ければ、腕の1本ぐらいは持っていかれてたっスね…。…やれやれ…帽子も…壊れちゃったっスねぇ…。しかし…まさかただの一振りでここまでとは…黒崎サン…キミは恐ろしい子供だ……。レッスン3、クリアっス!」
「お疲れ様、帽子直そうか?」
「お願いします。」
ゆうりは浦原の元へ歩み寄り帽子を拾い上げる。強力な斬撃を放った張本人は膝をつき、地面に鋒を突き刺した斬魄刀を支えにして器用に眠りについていた。恐らく、斬魄刀の力を初めて解放した事や絶望の縦穴で3日間過ごした疲労がピークに達したのだろう。
「店長、黒崎殿をお運びしますか?」
「そーっスねぇ、流石にこれ以上戦うのは無理そうなんで一旦寝かせてあげましょ。明日からまたみっちりイジメますんで♡」
「新しい玩具見つけた子供みたいな顔してるよ、喜助…。」
「子供の成長というのは何度見ても楽しいですから。」
そう言って彼の手のひらがぽんとゆうりの頭へ乗せられ優しく撫でる。握菱は一護を背負い、それ以外の面々は各自地上へと戻った。ゆうりは居間で浦原の帽子を回帰能力で直しつつ小さくぼやく。
「私も一護と戦いたいなぁ…。」
「アレ、意外と戦闘好きなんスね?」
「弓親さん達にも言われたなぁ、それ。あんな激しい戦い見せられたら、私だって鍛錬したくなっちゃうよ。でも地下は一護達が使ってるし、夜一さんは織姫たちに付きっきりだし……あっ。」
「……今アナタが考えてる事当てましょうか。"真子に声を掛ければ鍛錬に付き合ってくれるんじゃないか?向こうにも地下は有るんだし、そこを使わせて貰えば…"って所ですかねぇ?」
「…察しがいい事で。」
まさに彼の言う通りだった。この現世で浦原と夜一以外に頼れると言えば、平子達しか居ない。彼等だったら話次第で鍛錬に付き合ってくれるだろう。
帽子を直し終えたゆうりはポケットから携帯を取り出す。そうと決まれば即行動、とばかりに連絡を取ろうとする彼女に浦原はにこやかに杖先を携帯に向け下からそれを弾いた。
「あっ!」
「ボクが許すと思いました?」
弾き上げられた携帯は宙を舞い、浦原の手の中へと落ちた。取り上げられた事に対して不満げな表情で彼を見ると携帯は懐へと仕舞われてしまう。