第9章 現世編(後編)
「おい…何だよ?2人とも止まっちまったぞ…!?」
「…"入った"ね。」
彼に合わせて浦原も立ち止まった。同じ死神だからこそ分かる。恐らく彼は、精神世界へと引きずり込まれた。そして今、己の斬魄刀と対話をしているのだろう。空気がピリついているのがハッキリと分かる。
浦原が刀を構えた。完全に動きを停止した一護に、攻撃を与えようとしたその時だった。
「"斬月"!!!」
「!!」
「うわっ…!」
彼が死神の力を取り戻した時と同じように、巨大な爆発が起こる。大きな霊圧が渦を巻き、爆風から身を守ろうと握菱はウルルはとジン太を両腕で庇う。
「こ…今度は何だよ!?」
「あれが一護の斬魄刀…?」
強い光の中心から、一護の姿が顕になっていく。彼の手には巨大化した包丁の様なかなり大きい斬魄刀が、しかと握られている。刀と言うには些か疑問の形をしていたが、その霊力は以前のものと比べて圧倒的だ。
「何だ…あの斬魄刀…柄も鍔もありゃしねぇ…マトモな刀の形してねぇじゃねぇか…あれじゃ前の方がまだマシだぜ…。」
「…。」
「…さてと。そいじゃ、斬魄刀も出てきたとこで本格的にレッスン3始めましょうか!」
「…わりぃ、浦原さん。上手く避けてくれよ。」
「はい?」
「多分、手加減出来ねぇ」
ゆっくりと一護が斬魄刀を持ち上げる。それに連れ、禍々しいとも言えるくらい、霊圧が膨れ上がっていく。それはメノスを追い返した時と比にならない霊圧だ。それが斬魄刀へと集まっていく。
これをまともに受けたらヤバイ。
長年の経験が浦原に警笛を鳴らす。それ程離れて居なかったゆうりも、危機を感じて瞬歩を使い即座にその場を離れた。
「や、ば……!!」
「啼け!"紅姫"!!」
一護が刀を振り下ろすと同時に、大きな斬撃が刀から放たれた。高濃度に圧縮された霊気の塊は真っ直ぐ浦原へ襲い掛かる。
土煙が視界を遮る中、ふわりと浦原の帽子が宙を舞った。それは、つばの1部が切り落とされておりゆっくり地へ落ちていく。視界が明瞭になってくると、見えてきた光景にゆうり、握菱、ウルル、ジン太は驚いた。彼の斬撃は、絶望の縦穴にも劣らぬほど地を深く、そして遠くまで割いている。