第9章 現世編(後編)
「…へぇ。そんじゃあ丁度いい。その気合い使ってこのままレッスン3に入っちゃいますか!レッスン3はなんと!時間無制限!!斬魄刀を使ってアタシの帽子を落とせたら、クリア…」
塞いでいた目から両手を外し立ち上がった彼が全てを言い切る前に、一護は浦原の懐へと潜り込み欠けたままの刀を下から思い切り振り上げた。刀としてほぼ機能していないそれは、帽子のつばをほんの数センチ掠る。
「…へぇ。やりますねぇ。折れた斬魄刀でここまでとは…。」
「あったりめーだっ!!本気出しゃまだまだこんなもんじゃねーぞ!時間無制限なんて悠長なコト言ってねえでよ!5分ぐらいでカタ付けようぜ!」
「…ーーーそっスね。それじゃ5分で、カタ付けてみましょうか。」
浦原は口元に不気味な笑みを浮かべて仕込み杖からスラリと刀を抜いた。ゆうりは目を輝かせて彼を見る。戦っている浦原の姿を見るのは初めてだった。当然、斬魄刀も。ウルルとジン太を大きな岩陰へ呼び込む。
「それにしても、一護は凄いな…白哉にあんな容赦なくやられたばかりなのに、よく喜助相手に強気に出れるよね。」
「アイツ、店長が元隊長って知らねーんじゃねーの?」
「あ…そっか…もしかしたら死神である事すら知らないのかも。」
「バカ……。」
「あはは…ほら、一護はまだ若いし、死神になって浅いから…。」
刀を振り回す浦原を一護はただ避けるのみだった。彼の斬魄刀が、ガンガン岩にぶつかる度欠片が至る所へ飛んで行く。反撃する間もなく、あっという間に5分が過ぎた頃、未だ土煙が上がる穴の方向からバンッ、と地を叩く音が聞こえる。そちらへ視線を送ると、どうやら爆発に巻き込まれたらしく、傷は無くともヒビ割れたメガネを掛けた握菱が這い上がって来た所だった。
「おわ!無事だったのかよテッサイ…さん!」
「何が無事なものですか。メガネが重体です。」
「要するにアンタは無キズなんだろ、バケモノめ。まァ、いーや。その割れたメガネでも掛けておいた方がいいぜ。店長が刀抜いておもしれー事になってんだ。コレ見逃すと損だぜ!」
ジン太は腕を組んで浦原達へと視線を向けた。相変わらず一護は防御一辺倒で、乱暴に斬魄刀を振り回す彼から逃げることしか出来ない。そもそも彼は折れた斬魄刀しか持っていないのだから当然と言えば当然だ。