第9章 現世編(後編)
咄嗟にそう判断した浦原はジン太を、ゆうりはウルルを庇う。途端、ズンと重い霊圧が穴から噴き出した。
「何………」
「限界です店長!封殺型に切り替えます!!」
穴の底から握菱の声がした。様子は見れなかったが暴走し始めた一護が腕を拘束する縛道に抵抗を始めたらしい。握菱は印を結んでいた手を解き両手の人差し指と中指を地面へ突き立てる。
「卍禁!!初曲 止繃!!弐曲 百連閂!」
「お…ッ、おいっテッサイ!何してんだよ!そんなモン食らわしたらソイツ死んじまうぞ!?」
「こうなっては致し方ない!抑えつけるのも最早限界!虚となる前に消えて頂く!!」
一護の身体は更なる拘束を強めミイラにされる様に身体全体を布地の様に見えるものがぐるぐると覆い、太く長い針が肩と頭に突き刺さる。爆風が落ち着いたタイミングでゆうりは慌てて底を覗き込む。
「て…鉄裁さん、待ッ…!」
「終曲 卍禁太封!!!」
握菱が両手を合わせ詠唱すれば何も無い空間から人の何倍も大きく四角い石の塊が一護の真上に現れる。一護が、本当に殺されてしまう。そう思うより先に足が動く。縛道を止めようと穴へ飛び込もうとするゆうりに浦原は瞬時に反応すれば彼女の腕を掴み強引に抱き込み、纏めてウルルとジン太を再度腕の中へ庇う。
穴の中では彼の霊圧により破かれた布の隙間から虚の仮面が見えた。
「これまで!!」
「な…ば…爆発した…!?」
卍禁が執行されたのか、はたまたそれ以外の理由か、けたたましい爆発音が地下に響く。ゆうりはぽかんと口を開き爆発元を見る。
一護が、死んでしまったかもしれない…!そんな不吉な考えが過ぎる中、穴から爆発の土煙を纏った何かが飛び出して来た。
「な…何か出てきやがったっ!!あのガキか!?」
「わっ…!」
空のペイントがされた天井まで跳んだそれは浦原達から少し離れた位置へ地面を割りながら着地する。
そこに立った者から感じる霊圧は、とても馴染みがあるものでゆうりはホッと息を着く。
「…な…なんなんだよ…一体…?おい!お前か!?ガキ!返事しろオレンジ色!オメーなのかよ!?生きてんなら返事しろってーーー…!」
「…出てきたね。」
「ーーー…あ…死覇装に…仮面…虚なのか…?死神なのか…?…どっちなんだよ…!?」