第9章 現世編(後編)
「うん、20年以上も前の話しよ。…空座町で出現した虚を隊長が退治していたんだけど色々あって少し苦戦してた時…高校生位の女の子が協力してくれたの。その時見たのが初めてかな。」
「協力…?」
「そう!女の子は自分が怪我を負いながらも、死神である私達に助力した。20年前では既に滅却師なんてとても希少だったから驚いたわ。何より驚いたのはその子に何者だ、って問い掛けた時に真っ直ぐな目で"滅却師です。"って答えたの。きっと不安だったと思うよ…数百年前だとしても死神は滅却師を滅ぼしたんだから。名乗れば自分が殺されるかもしれない。」
「……そうだね。事実、君たちにとって僕らの存在は今でも邪魔でしか無いだろう。」
「そうじゃないの!!」
「ッ………!」
ずい、と近付くゆうりの顔に殆ど反射で身を引いた。一々近い、近過ぎる。彼女の人と人との距離感は一体どうなってるんだ…!?必死なのは伝わってくる、だけどそんなに顔を寄せないで欲しい。心臓が、もたない。
「死神と滅却師は戦い方も目的も違う。けれど虚を倒して生きている人たちを守りたい…それは同じでしょう?あの時みたいに死神と滅却師は協力し合えると思うの。……滅ぼした奴らが何を都合がいい事って思うかもしれないけれど、私はあれ以来女の子と友達になる事も叶わなかったから…雨竜とは友達になれたらいいなって…。」
「と、友達…?何を言ってるんだ君は。死神と滅却師が友達だなんて…。」
「今日からクラスメイトじゃなくて友達ね!ハイ決定!!」
「強引過ぎないかい!!?」
「だって雨竜、頷いてくれないんだもの。」
陽気に笑って両足を伸ばした彼女に深く溜息をついた。どうにも死神になる様な連中は話を聞かない奴が多いらしい。
形容しがたい感情に眉を寄せ頬を掻けば、ふとゆうりは瞳を細めた。
「……私は確かに死神だけど、とっくに尸魂界から切り離された死神だよ!それならいいと思わない?」
「結構無茶苦茶なことを言うね…。そういえば、朽木ルキアは黒崎に死神の力を譲渡したのだろう?染谷さんは一体…」
「それは……」
「あーーー!!いたいたーーーーー!!うおーーい石田くーー…あれ!?ゆうりちゃんも居る!?」