第9章 現世編(後編)
「…この家は人をバカにする奴しか居ねーのか…。」
ひくりと頬を引き攣らせ青筋を立てる一護を気にも留めず食事を終え、浦原達を残しゆうりと一護は学校へ向かった。終業式という事もあってか疎らに歩く生徒たちの足取りは何処か軽そうに見える。
「終業式まであっという間だったなぁ。」
「ゆうりも尸魂界に行くんだろ?…その…大丈夫なのかよ?」
「大丈夫じゃない?なんでか知らないけど私が生きてる事はまだ尸魂界にバレてないみたいだし、それに友達が殺されるかもしれないのに知らんぷりなんて出来ないよ。一護はどうしてルキアを助けてくれるの?それこそ、貴方は半年にも満たない付き合いでしょう。」
「…俺はルキアから死神の力を貰った事で、家族を守る事が出来たんだ。アイツは俺に力を渡さなければ、こんな事にはならなかったんだろ?なら、今度は俺がルキアを助ける番だ。」
神妙な顔付きで拳を握る一護にゆうりは俄に目を見開いた。彼は本当に、海燕に似ている。それが何処か嬉しくもあり、寂しくも感じた。
「一護は男前だね。護廷にはあと12人もの隊長が居るのに、それでも向かうなんて事普通言えないよ。」
「相手が強いなら俺がそれ以上に強くなれば良いだけの話だろ?そのための勉強会だ!」
「そうね。喜助だったらきっと、一護を強くしてくれるわ。」
なんせ、彼も四楓院もかつては護廷を護る隊長の1人だったのだから。
話をしている間に学校に着いた2人は下駄箱で靴を履き替え教室に入る。いの一番に反応したのは浅野だった。一緒に登校してきた彼らに絶望と嫉妬の眼差しを向け、席に着こうとする一護の肩を思い切り掴む。
「ぃぃぃい一護?お前家に行っても居ねぇと思ったら何!?なんで染谷さんとイチャイチャラブラブしながら登校してんの!?」
「イチャイチャもラブラブもしてねェだろ、どう見たらそうなるんだよ。」
「でも珍しいね、家に居なかったって事は染谷さんと一緒に居たの?」
「あー…まぁ、ちょっとな。」
適当に話を誤魔化しながら、鞄を置き隣の席を見て固まった。本来ルキアの席だった場所は知らない生徒が座っている。咄嗟に一護は振り返りゆうりに視線を送った。視軸の絡んだ彼女は眉を下げ、彼の隣へ立ちひっそりと耳打ちする。